2024年11月16日から3日間、設立100周年を迎えた米国心臓協会(AHA)は第99回学術集会を米国シカゴでライブ開催した(リモートでの参加は不可)。かつてと異なり、参加者数や採択率は公表されなかった。注目の臨床試験を紹介したい(12月上旬Web記事を一部短縮して整理。Web記事に参照文献リンクあり)。
2023年に報告されたランダム化比較試験(RCT)“STEP-HFpEF”を受け、左室機能維持心不全(HFpEF)例に対するGLP-1受容体刺激の心血管系(CV)転帰改善に期待が集まっている。そうした中、今度はGLP-1/GIP受容体アゴニストがHFpEFのCV転帰を改善するというRCT“SUMMIT”が、Milton Packer氏(ベイラー大学、米国)により報告された(報告と同時にNEJM誌で論文公開)。
SUMMIT試験の対象は「EF≧50%」かつ「BMI≧30kg/m2」の症候性心不全(HF)で、さらに「左房拡大」か「左室充満圧上昇」あるいは「NT-proBNP上昇」のいずれかを認め、加えて「HF増悪高リスク」基準を満たした731例である。世界9カ国から登録された。ほかのHFpEF試験と異なり「NT-proBNP上昇」が必須となっていない点をPacker氏は強調した。
平均年齢は65歳、50%強が女性だった。NT-proBNP中央値は、両群とも200pg/mL以下。一方、hsCRP平均値は5.8mg/dLで、47%には直近1年間の代償不全HF入院歴があり、KCCQ-CSS平均値は54点、6分間歩行距離平均は300m強だった。
これら731例はGLP-1/GIP受容体アゴニスト(チルゼパチド)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。1次評価項目は「CV死亡・HF増悪」と「52週後のKCCQ-CSS」である。
当初は、このようなイベント発生リスクを比較するには検出力が不十分と考え、「総死亡・HF入院+KCCQ-CSS改善」から順に検討する「勝敗比(win ratio)」での比較を予定していた。しかし2023年に報告されたSTEP- HFpEF試験では、全体のHF発症が13例のみだったにもかかわらず、有意な群間差が検出された。それを契機にSUMMIT試験でも統計解析を見直し、このような形になったという。
104週間(中央値)観察後、GLP-1/GIP受容体アゴニスト群における「CV死亡・HF増悪」の対プラセボ群ハザード比(HR)は0.62(95%CI:0.41-0.95)の有意低値となった(治療必要数[NNT]:19)。両群のカプランマイヤー曲線が乖離を始めたのは開始24週後からである(それまではほぼ一致)。
これら1次評価項目の差をもたらしたのは、もっぱら「HF増悪」(HR:0.41、95%CI:0.22-0.75)だった(「CV死亡」には有意差なし)。
「52週後のKCCQ-CSS」も同様で、GLP-1/GIP受容体アゴニスト群でプラセボ群に比べ、6.9点(中央値)の有意改善を認めた。
GLP-1/GIP受容体アゴニスト群におけるこれら2つの1次評価項目改善は、「年齢」「性別」「BMI 35kg/m2の上下」「EF 60%の上下」などを問わず、一貫していた。
体重は試験開始直後から両群間に大きな差を認め、GLP-1/GIP受容体アゴニスト群では52週後、プラセボ群に比べ減量率幅は11.6%、有意に大きくなっていた。
一方hsCRPは、群間差を認めるまでに時間を要した。最終的に52週後、GLP-1/GIP受容体アゴニスト群ではプラセボ群に比べ低下幅は34.9%有意に大きかったものの、群間差が有意となったのは試験開始から24週を経過した後である。
GLP-1/GIP受容体アゴニストによる有用性の機序は「減量」ではなく、「内臓脂肪」の変質だとPacker氏は考えている(同氏はこれを「怒っている脂肪細胞をなだめる」とたとえた)。具体例として挙がったのは、内臓脂肪における「炎症抑制」と「CV系に悪影響を及ぼすアディポカイン放出抑制」である(なお別セッションでは「心外膜脂肪にはどの組織よりGIP受容体が多い」と発言しており、GIP受容体刺激が心外膜脂肪に直接及ぼす影響も念頭にはありそうだ)。
共同座長のAmit Khera氏(サウスウェスタン大学、米国)が言及した通り、SELECT試験で観察されたGLP-1-RAによる肥満例CVイベント抑制は、減量を介さないとするデータが報告されている[本誌2024年米国糖尿病学会報告(5250号)]。「炎症」を重視する立場のPacker氏は、仮に今後SUMMIT試験の追加解析で減量と転帰改善が相関していなくとも「特に驚かない」と述べていた。
本試験はEli Lillyから資金提供を受けて実施された。同社はプロトコール/統計解析プラン作成にも参加し、データ解釈についての意見も述べた。またNEJM論文著者として社員5名が名を連ねた。
2型糖尿病(DM)に対する収縮期血圧(SBP)「120mm Hg未満」目標厳格降圧治療は、2010年に欧米で実施された大規模ランダム化比較試験(RCT)“ACCORD”において、有用性が否定されている。しかし同試験には検出力不足などいくつかの問題点も指摘されており、新たなRCTによる再検討が待たれていた。
本学会では、その待望のRCT“BPROAD”がGuang Ning氏(上海第二医科大学、中国)により発表された。2021年欧州心臓病学会で報告されたSTEP試験に続き、再び中国発のエビデンスが積極降圧の有用性を支持する形となった(報告と同時にNEJM誌で論文公開)。
BPROAD試験の対象は、中国在住で心血管系(CV)高リスクの2型DM例中、SBPが「降圧薬非服用で140 mmHg以上」、または「降圧薬服用で130mmHg以上」だった、50歳以上の1万2821例である。登録はDM・高血圧例を数多く扱う二次、三次医療施設で実施された。プライマリ・ケア施設は含まれていない。
平均年齢は64歳、女性が45%を占めた。血圧平均値は140/76mmHg。99%が降圧薬を服用していた(平均1.4[±0.6]剤)。
CV疾患既往率は症候性が23%、無症候性は35%。「推算糸球体濾過率(eGFR)<60mL/分/1.73m2」例は7.6%だった。なおDM罹患期間平均値は10年、HbA1c平均値は7.6%である。
これら1万2821例は、SBP降圧目標「120mmHg未満」群と「140mmHg未満」群にランダム化され、非盲検下で観察された。降圧目標達成には、SPRINT試験と同様のアルゴリズムを用いた。なお降圧目標「140mmHg未満」群では降圧薬の「減量」も許された。
降圧目標「140mmHg未満」群では、試験開始翌月にはSBP平均値が135mmHg未満まで低下し、試験終了時まで維持された(観察期間平均:132mmHg、中央値:134mmHg)。
一方「120mmHg未満」群でも、試験開始翌月にはSBP平均値が130mmHg未満まで低下、1年後には122mmHgまで低下したが、その後の「120mmHg未満」達成率は60%前後で推移した(観察期間平均:121 mmHg、中央値:118mmHg)。
なおアルゴリズム上、目標血圧に到達するまでは降圧薬調整のため「毎月」の受診が必要とされた(達成後は3カ月に1回)。そのため受診回数は、「120mmHg未満」群のほうが相当に多かったと推測される。
使用降圧薬の平均数(試験終了時)は、「140mmHg未満」群が1.4剤、「120mmHg未満」群でも2.2剤だった。なお先述の2型DM例対象ACCORD試験では、139 mmHgから119mmHgへのSBP降圧に要した薬剤数は3.4剤だった。一方、DM合併の有無を問わない中国人高血圧例を対象としたRCT“STEP”では、146mmHgだったSBPが平均1.9剤で127mmHgまで低下していた。
4.2年間(中央値)の観察後、1次評価項目の「脳卒中・心筋梗塞・心不全加療/入院・CV死亡」(CVイベント)リスクは、降圧目標「120mmHg未満」群で「140mmHg未満」群に比べ、相対的に21%、有意に減少していた(ハザード比[HR]:0.79、95%CI:0.69-0.90)。治療必要数(NNT)は「63」(年間228例)である。両群のカプランマイヤー曲線は試験開始後1年を待たずに乖離を始め、試験終了までわずかながらも差は開き続けた。
降圧目標「120mmHg未満」群におけるCVイベントリスク減少は、「年齢」「性別」「CV疾患既往歴の有無」「CKD履歴の有無」を問わず一貫していた。さらに開始時SBPの高低にも影響を受けていなかった。
なお「総死亡」リスクには、両群間で有意差を認めない(「120mmHg未満」群HR:0.95、95%CI:0.77-1.17)。
重篤有害事象の発現率は「症候性低血圧」「失神」「急性腎不全」を含め、両群間に有意差はなかった。ただし「高カリウム血症」発現は「120mmHg未満」群で有意に多かった(害必要数[NNH]:121)。
指定討論者のDorairaj Prabhakaran氏(慢性疾患管理センター、インド)はDM例に対する積極的降圧の有用性を認めながら、「費用対効果」の検討も必要だと指摘した。
本試験は中国各種公的機関から資金提供を受けた。製薬会社からの提供はないという。
慢性心不全(HF)治療には「ファンタスティック・フォー」と呼ばれる4種の心保護薬がある。しかしいずれも、急性心筋梗塞(MI)後(亜)急性期開始による心血管系(CV)転帰改善は証明されていない。すなわち左室機能維持例に対するβ遮断薬の有用性はランダム化比較試験(RCT)“REDUCE-AMI”で否定され、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬を用いたRCT“PARADISE-MI”、SGLT2阻害薬の“EMPACT-MI”でも、1次評価項目である「(CV)死亡・HFイベント」抑制は確認されなかった。
唯一残っていたのがミネラルコルチコイド受容体拮抗薬だったが、RCT“CLEAR-SYNERGY”においてスピロノラクトンは、MI例(±左室機能低下)の「CV死亡・HFイベント」を抑制しなかった。Sanjit S Jolly氏(マクマスター大学、カナダ)が報告した(報告と同時にNEJM誌で論文公開)。
CLEAR-SYNERGY試験の対象は、PCI施行から72時間以内のMI 7062例である(当初の導入基準はSTEMI[左室機能は問わず]のみ。途中で症例数を増やすために高リスクNSTEMI[含:左室機能低下]を追加)。欧米、豪州、ネパール、エジプトの14カ国から登録された。
平均年齢は61歳、女性は20%。MI類型はSTEMIが95%を占めた。発症時「Killip分類≧Ⅱ」だったのは0.7%、またHF既往例も0.8%のみだった。
退院時、抗血小板薬とスタチンはほぼ全例が服用し、レニン・アンジオテンシン系阻害薬の服用率も8割近く、β遮断薬は7割近くが服用していた。
これら7062例はスピロノラクトン(25mg/日)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。
3.0年間(中央値)観察後、1次評価項目である「CV死亡・全HF(発症/増悪)」と「CV死亡・初発MI/脳卒中/HF」はいずれも、スピロノラクトン群とプラセボ群間に有意差を認めなかった(スピロノラクトン群におけるハザード比[HR]はそれぞれ0.89[95%CI:0.73-1.08]と0.95[同:0.80-1.12])。この結果は、事前設定されたすべての亜集団で一貫していた。
ただしイベントを個別に比較すると、「HF発症/増悪」リスクのみならばスピロノラクトン群でリスクは有意に低下していた(HR:0.69、95%CI:0.49-0.96。治療必要数[NNT]:125)。この有意差は、実際に割り付け治療を受けた例のみを対象とした感度解析でも維持された。
なお本試験は「2×2」デザインで、低用量コルヒチンの有用性をプラセボと比較している。しかしコルヒチン併用の有無とスピロノラクトンの作用間に、有意な交互作用はなかった。
有害事象としては、「服薬中止を要する高カリウム血症」(害必要数[NNH]:96)と「女性化乳房」(同:56)がスピロノラクトン群で有意に多かった。
指定討論者のMarc P. Bonaca氏(コロラド大学、米国)は、1次評価項目に有意な群間差を認めなかった理由として、検出力不足の可能性を指摘した。事実、本試験ではイベント発生率が当初想定よりも相当に低かったため、サンプル数を試験途中で3000例増やしている。それでもまだ、検出力不足が疑われるという。
同氏によれば、プラセボ群における年間CV死亡率は、2003年報告のRCT“EPHESUS”(エプレレノンがMI後左室機能低下例の「総死亡・CV入院」を相対的に13%有意抑制)では10.7%/年だったのに対し、本試験では1.7%のみである。本試験ではMI急性期に全例がPCIを受け(EPHESUS試験では再灌流/血行再建を合わせて45%)、抗血栓療法と心保護療法も2000年当初に比べれば進歩している。「その上に新たな治療を加えても有用性を観察するのは難しいだろう」とBonaca氏は述べた。
一方、パネルディスカッションでは、本試験の「Killip分類≧Ⅱ」・HF既往例とも1%未満だった点に着目し、「Killip分類≧Ⅱ」であれば(HF予防を目的として)スピロノラクトンを用いるべきでは、との声が上がった。これに対してはJolly氏も、「HF発症高リスクであれば用いるべきだ」との考えを示した。
本試験は研究者主導で実施され、カナダ保健研究機構とボストン・サイエンティフィック、公衆衛生研究所の支援を受けた。
治療抵抗性の心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーションは、周術期成績こそ改善されてきたものの、遠隔期AF再発が問題として残っている。しかしこの再発をAFリスク因子の積極的管理だけで相対的に40%以上抑えられることが、小規模ながらランダム化比較試験(RCT)で示された。Rajeev K. Pathak氏(アデレード大学、豪州)がARREST-AF試験の結果として報告した。これまでも心血管系(CV)リスク管理によるアブレーション後AF再発抑制を示唆する観察研究(ARREST-AF cohortなど)は報告されていたが、RCTによる検討は初めてだという。
ARREST-AF試験の対象は、発作性/持続性の症候性AFに初回アブレーションを施行し、「肥満」と「CVリスク因子」(後述)を認めた豪州在住の122例である。「肥満」の基準は「BMI≧27kg/m2」かつ「腹囲径、男性:≧100 cm、女性:≧90cm」とされた。
平均年齢は約60歳、女性はおよそ2割のみ、平均BMIは33kg/m2だった。またAFは59%が「持続性」だった。「CVリスク因子」最多は「高血圧」の73%、ついで「睡眠時無呼吸」(40%)、「喫煙(歴)」(39%)、「過度のアルコール摂取」(35%)、「糖尿病」(14%)の順となっていた。
これら122例はCVリスク因子に積極介入する「CV積極介入」群と「通常治療」群にランダム化され、盲検化されることなく観察された。「CV積極介入」群では上記5つのCVリスク因子に加え、「肥満」と「身体活動性」「血清脂質」にも積極介入した(合計8因子)。両群とも観察はクリニック(複数)で実施し、フォローアップ受診は3カ月おきとした。
1次評価項目は「抗不整脈薬非服用下のAF再発」である。AF検出には7日間Holter心電計を用いた。
平均12.3カ月観察後、「体重」と「収縮期血圧」は「CV積極介入」群でのみ、試験開始前に比べ有意な低下を認めた。減量幅は9kg、血圧低下幅は13mmHg(138→ 125mmHg)である。また「身体活動性」も「CV積極介入」群でのみ、有意な改善を認めた(7.9→8.9METs)。一方、血糖値と血清脂質は両群とも、試験開始後の有意な改善はなかった。
一次評価項目である、抗不整脈薬非服用下AF「非」再発率は、「CV積極介入」群(61%)で「通常治療」群(40%)に比べ有意に高かった。「CV積極介入」群における再発ハザード比は0.53(95%CI:0.32-0.89)である。両群のカプランマイヤー曲線が乖離を始めたのは、試験開始後90日を経過してからだった(それ以前はまったく差なし)。
AF重症度スコア(AFSS)を用いて評価したAFの「頻度」と「持続時間」は「CV積極介入」群でのみ、試験開始後の有意低下を認めた。一方、「AF症状重症度」は両群とも有意に改善し、群間差はなかった。
指定討論者のRatika Parkash氏(ダルハウジー大学、カナダ)は、本研究は症例数が少ないため「CV積極介入」による作用を過大評価している可能性も否定できないとし、より大規模なRCTでの確認が必要だと指摘した。
本試験はアデレード大学とロイヤル・アデレード病院から資金提供を受けた(臨床試験登録レジストリ“ANZC TR”による。学会報告では開示なし)。
アントラサイクリン系抗癌剤の心毒性は古くから知られているが、これを抑制する手立ては確立されていない。不全心への保護作用が確立しているβ遮断薬やレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬も、アントラサイクリン薬後の心機能低下作用を検討したランダム化比較試験(RCT)はネガティブだった(Cardiac CARE、PROACT試験)。しかしアンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNi)を心不全(HF)高リスク例に限定して用いれば、アントラサイクリン薬使用後の左室機能を維持できる可能性があるようだ。RCT“SARAH”の結果、明らかになった。Marcely Gimenes Bonatto氏(サンパウロ大学、ブラジル)が報告した。
SARAH試験の対象は、アントラサイクリン系抗癌剤治療後に、99パーセンタイル値超の高感度トロポニンI(hs-TnI)濃度を認めたがん患者114例である。単一施設で登録された。ただし化学療法や放射線療法の既往例は除外、加えてRA系阻害薬かβ遮断薬服用、あるいは「収縮期血圧<100mmHg」例なども除外されている。hs-TnI基準値を設けたのは、HF高リスクのみを抽出するためだという。
平均年齢は52歳、90%が女性だった。がん種最多は乳癌の81%で、アントラサイクリン累積使用量は240mg /m2。左室駆出率(EF)平均は、エコー評価で64%。心血管系リスクとしては高血圧(32%)が最多で、高コレステロール血症(12%)と糖尿病(10%)が続いた。
これら114例はARNi(通常用量)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で24週間観察された。1次評価項目は、左室収縮機能の指標である「グローバル長軸方向ストレイン(GLS)の15%以上減少」である。
その結果、「15%以上のGLS減少」の発現率は、ARNi群でプラセボ群に比べ有意に少なかった(7.1 vs. 25.0%。オッズ比[OR]:0.23、95%CI:0.07-0.75)。治療必要数(NNT)は6である。
GLS推移をたどると、試験導入時評価からランダム化までは、両群とも同等に減少していた。しかし試験薬開始直後から、ARNi群では減少が止まり、最終的には増加傾向を示した。一方プラセボ群のGLSは、観察期間を通して減少を続けた。
同様に2次評価項目の「EF(心臓MRI評価)」も、プラセボ群が24週間後「60→58%」へ有意低下したのに対し、ARNi群では「59→61%」と不変だった(群間差P= 0.027)。なおエコー評価EFには、両群間で有意差を認めない。
ARNi群では低血圧発現が有意に多かった(害必要数[NNH]:9)。ただしほとんどは薬剤減量により対処可能で、服薬中止は要さなかったとのことだ。また血清カリウム値も、ARNi群で有意に高かった(4.31 vs. 4.16 mmol/L)。
Bonatto氏は本研究の限界として「観察期間が短期」(24週間)と「症例数が少ない」(114例)の2点を挙げた。
指定討論者のBonnie Ky氏(ペンシルバニア大学、米国)も同様の観点から、この結果を臨床に反映するのは時期尚早とし、現在進行中のRCT“PRADA Ⅱ”の結果を待つ必要があるとした。同試験ではアントラサイクリン薬(±HER2阻害薬)使用乳癌女性300例を対象に、ARNiが心臓MRI評価EFに与える影響が18カ月にわたりプラセボと比較される。現時点における終了予定は、2025年である[NCT03760588]。Ky氏はまたHF予防治療の対象として、心保護治療がベネフィットをもたらしうる(HF高リスク)がん患者を特定する重要性も強調していた。
本試験は企業からの支援は一切受けていないとのことである。