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第175回:学会レポート─2025年国際脳卒中学会(ISC)

登録日:
2025-04-01
最終更新日:
2025-04-01

2月5日から3日間、米国ロサンゼルスにて国際脳卒中学会(ISC)学術集会が開催された。大規模試験としては、脳梗塞に対する血管内治療の適応拡大をめざしたランダム化比較試験(RCT)が3つともネガティブに終わったのが目を引いた(DISTAL、ESCAPE-MeVO、DISCOUNT)。ここでは「脳梗塞亜急性期における脳保護療法」と「脳卒中既往を持つ心房細動例への抗凝固療法」を検討した未論文化RCTを含む4報を紹介する(2月上旬ウェブ速報を再整理)。

TOPIC 1
ミノサイクリンが脳梗塞後の機能転帰を改善:大規模二重盲検RCT“EMPHASIS”

脳卒中後の後遺症軽減をめざし、神経細胞保護薬の開発は古くから進められてきた。しかしその有用性が、大規模ランダム化比較試験(RCT)で証明された薬剤は多くない。第2世代テトラサイクリンである「ミノサイクリン」もその1つである。

抗炎症作用を介した神経細胞保護が期待され、既に有効性も報告されている。ただしいずれも動物実験や小規模非盲検RCTだった。しかし国際脳卒中学会(ISC)では、1500例以上を対象とした二重盲検RCT“EMPHASIS”が報告され、同薬の脳梗塞後機能転帰改善が証明された。報告したのは、首都医科大学(中国)のYao Lu氏。

【対象】

EMPHASIS試験の対象は、中国在住で発症後72時間以内の脳梗塞1724例である。「72時間以内」としたのは、その時点以降の神経細胞炎症亢進が報告されているからだという。

【方法】

これら1724例はミノサイクリン群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で90日間観察された。ミノサイクリン、プラセボとも、ランダム化24時間後に200mgを静注し、その後は12時間おきに100mgを4日間与薬した。

【患者背景】

平均年齢は65歳、29%に脳梗塞既往があった。脳梗塞治療を見ると、経静脈的血栓溶解療法施行率は12%、血管内治療は2.4%のみだった。

【結果】

・有効性

その結果、1次評価項目である90日後の「mRS:0−1」患者の割合は、ミノサイクリン群(53%)でプラセボ群(47%)よりも有意に高かった。リスク比(RR)は1.11(95%CI:1.03−1.20)、治療必要数(NNT)は「20」である。
「mRS:0−2」で比較しても同様で、ミノサイクリン群におけるRRは1.07(同:1.02−1.12)の有意高値、NNTは「22」だった。

・安全性

ランダム化後6日間の症候性頭蓋内出血発症率に、両群間で差はなかった(ミノサイクリン群:0.3%、プラセボ群:0%)。また90日間の「血管系死亡」(1.2 vs. 1.9%)と「総死亡」(1.6 vs. 2.3%)も同様で、両群間に有意差はなかった。

【考察】

ミノサイクリンによる脳梗塞後機能転帰改善作用は、現在、米中5つのRCTで検討されている。現時点で最も早く終了が見込まれるのは、米国で進行している「NCT 05032781」のようだ。

本試験は、中国国家自然科学基金委員会とBeijing Healthunion Cardio-Cerebrovascular Disease Preven-tion and Treatment Foundationから資金提供を受けた。

TOPIC 2
再還流療法非実施2型DM例の脳梗塞にGLP-1-RA追加で脳卒中再発減少。機能転帰改善も:中国RCT“LAMP”

血糖管理不良の脳梗塞例では、血栓溶解薬静注が見送られるケースもある(静注血栓溶解[rt-PA]療法 適正治療指針 第三版)。そのような場合、GLP-1-RAを追加すると、脳卒中再発抑制と機能転帰改善を図れるかもしれない。中国で実施されたランダム化比較試験(RCT)“LAMP”の結果、明らかになった。曁南大学(中国)のHui-Li Zhu氏が報告した。

【対象】

LAMP試験の対象は中国在住の、軽症脳梗塞(NIHSS≦3)か高リスク一過性脳虚血発作(TIA)(ABCD2≧4)発症から24時間以内で、血栓溶解/血栓回収療法を実施していない2型糖尿病(DM)636例である。脳卒中再発例も登録可能だったが「mRS≦1」例に限られた。心原性脳塞栓症は除外されている。27施設から登録された。

なお予定されていた症例数は1708例だった(登録遅延のため早期打ち切り)。

【方法】

これら636例は「標準治療」群と、標準治療にGLP-1-RA(リラグルチド)を追加する「GLP-1-RA追加」群にランダム化され、非盲検下で観察された。リラグルチドはランダム化初日から1日1回皮下注を90日間継続した(0.6~1.8mg/日)。

【患者背景】

年齢中央値は63.5歳、女性が36%を占めた。またHbA1cは8.2%だった(中央値)。

脳血管障害の内訳は脳梗塞が97%を占め、NIHSS中央値は2だった。類型としてはアテローム動脈硬化性が最多で50%近くを占め、ついで小血管閉塞(45%強)だった。TIA例(3%)のABCD2スコア中央値は4~5である。

【結果】

1次評価項目である90日間の「脳梗塞・脳出血」発生リスクは、「GLP-1-RA追加」群で有意に低かった(ハザード比[HR]:0.56、95%CI:0.34−0.91)。発生率は「7.9 vs. 13.8%」である(治療必要数[NNT]は「17」)。両群のカプランマイヤー曲線は試験開始直後から乖離を始めたが、およそ30日が経過すると差はさほど広がらず、また発生率曲線もほぼ水平のまま推移した。

なお「脳梗塞」と「脳出血」にわけて解析すると、「GLP-1-RA追加」群における「脳出血」減少は有意とならず、傾向にとどまった(両群とも1例のみ)。

2次評価項目の1つである90日後「mRS≦1」例の割合も、「GLP-1-RA追加」群で有意に高かった(87.3 vs. 77.8%。NNT「11」)。「mRS≦2」で比較しても同様だった。

一方、「症候性頭蓋内出血」発生率は「GLP-1-RA追加」群で0.3%、「標準治療」群が0.6%だった(P=0.5)。「死亡」も順に0.3%と1.3%で有意差はなかった(P=0.1)。

【考察】

本試験は登録患者数が当初予定に達していない(検出力不足)ため、 本試験で示唆されたGLP-1-RAの有用性は別試験であらためて検証する必要があると、Zhu氏は結語で述べた。
本試験は、広州科学技術プログラムから資金提供を受けて実施された。

TOPIC 3
脳梗塞既往のあるAFではOAC単独の抗血小板薬併用への優越性確認できず:日本発RCT“ATIS-NVAF”

合併症が「冠動脈疾患」であれば、心房細動(AF)例への抗凝固薬(OAC)単剤は、抗血小板薬併用に比べ「心血管系(CV)イベント/死亡」、「大出血」とも有意にリスクを抑制する(ランダム化比較試験[RCT]“AFIRE”1))。しかし「脳梗塞既往」のあるAF例では話が違うようだ。大阪医療センターの岡崎周平氏と筑波大学の山上 宏氏(研究責任者)が、RCT“ATIS-NVAF”の結果として報告した。

【対象】

ATIS-NVAF試験の対象は、直近8~365日間に脳梗塞か一過性脳虚血発作(TIA)をきたしたOAC服用AF患者で、かつアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を合併していた316例である。ただし過去1年間に急性冠症候群を発症/PCI施行、あるいは直近6カ月に大出血をきたした例などは除外されている。全国41施設から登録された。なお当初は400例の登録を予定していた[UMIN 000025392]。

【方法】

これら316例はOAC 1剤と抗血小板薬1剤ずつ併用する「抗血小板薬併用」群とOAC 1剤のみを服用する「OAC単独」群にランダム化され、非盲検下で観察された。OACと抗血小板薬の選択は現場に任された。

【患者背景】

平均年齢は77.2歳、男性が72%を占めた。脳梗塞/TIA発症からランダム化までの期間中央値は21日だった。最も多かった合併ASCVDは「アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞または穿通枝領域脳梗塞」(50%超)、ついで「頭蓋内動脈狭窄」「頸動脈狭窄」だった。

【結果】

・抗凝固療法

「OAC単独」群、「抗血小板薬併用」群とも、OACはアピキサバンが最多(46%と38%)で、エドキサバン(22%と35%)が続いた。抗血小板薬最多はアスピリン(52%)。ついでクロピドグレル(31%)、シロスタゾール(17%)だった。

・1次評価項目

本試験は2年間観察予定だったが、中間解析の結果、早期中止となった。

観察終了時、1次評価項目である「CV死亡・虚血性CVイベント・大出血」リスクは、両群間に有意差を認めなかった(「OAC単独」群:19.6%、「抗血小板薬併用」群:17.8%。ハザード比[HR]:1.10、95%CI:0.64−1.89)。

・2次評価項目

同様に「虚血性CVイベント」と「脳梗塞」、「大出血」を個別に比較しても、両群間にリスクの有意な差はなかった。ただし「大出血および臨床的に問題となる出血」リスクは、「OAC単独」群で有意に低かった(HR:0.41[0.21−0.81]。治療必要数[NNT]は「10」)。

本試験はブリストル マイヤーズ スクイブとファイザーから資金提供を受けて実施された。

TOPIC 4
脳出血既往AF例に対するDOACの有用性は確認されず:RCT“PRESTIGE-AF”

非外傷性脳出血例が、経口抗凝固薬(OAC)の適応となる心房細動(AF)を合併していた場合、OACを開始すべきだろうか。小規模ランダム化比較試験(RCT)参加例データメタ解析(COCROACH)2)では結論が出ていない。そのため大規模RCTが進められているが、その第1弾となるPRESTIGE-AF試験では、DOACによる脳梗塞の有意な減少を認めた一方、脳出血再発リスクも上昇するという結果に終わった。インペリアル・カレッジ・ロンドン(英国)のRoland Veltkamp氏が報告した3)

【対象】

PRESTIGE-AF試験の対象は、非外傷性脳出血発症から14日以上(1年未満)経過した、DOAC適応のあるAF患者319例である。ただし「mRS>4」例やAF以外にもDOAC適応のある例、抗血小板薬適応例は除外されている。欧州6カ国、63施設から登録された。

【方法】

これら319例は、DOAC「服用」群と「非服用」群にランダム化され、非盲検化で観察された。DOAC選択は主治医に任された。

【患者背景】

平均年齢は80歳弱、女性が35%を占めた。血圧平均値は130弱/75強mmHg、CHA2DS2VAScスコア中央値は4、HAS-BLEDスコアは3だった。また脳出血部位は30%がlobarだった。

【結果】

1.43年(中央値)の観察期間中、有効性1次評価項目である「脳梗塞(初発)」発生リスクは、DOAC「服用」群で「非服用」群に比べ有意に低下していた(ハザード比[HR]:0.05、95%CI:0.01−0.36。発生率は0.6%と12.4%。治療必要数[NNT]は「13」/年)。「非服用」群における脳梗塞発生は試験開始直後から観察され、試験終了時まで増加し続けた。

一方、安全性1次評価項目の「脳出血再発」リスクは、DOAC「服用」群における「非劣性」(vs. 「非服用」群)を証明できなかった。すなわち、非劣性マージンが「1.735」のところ、「服用」群におけるHRは10.9(95%CI:1.95−60.7)だった(発生率は「服用」群:7.0%、「非服用」群:0.6%。害必要数[NNH]は「24」/年)。「服用」群における脳出血再発は試験開始直後から観察され、試験終了時まで増加が続いた。

そして「全脳卒中/塞栓症・心筋梗塞・心血管系死亡・大出血」を比較すると、DOAC「服用」群におけるHRは0.67(95%CI:0.33−1.36)で「非服用」群と有意差はなかった(発生率は19.2/年 vs. 26.5/年)。

【考察】

Veltkamp氏はこの試験の結果のみで脳出血既往AF例に対するDOAC有用性を判断するのは適切でないとし、現在進行中のRCT“ENRICH-AF”4)や“ASPIRE”5)の結果を待つ必要があると述べた。また同様の患者にDOACではなく、経皮的左心耳閉鎖術の有用性を検討するRCTも進行中だという(STROKECLOSE6)、A3ICH7)、CLEARA NCE8))。

本試験は欧州連合から資金提供を受けて実施された。

【文献】

1)Yasuda S, et al:N Engl J med. 2019;381(12): 1103-13.

2)Al-Shahi Salman, et al:Lancet Neurol. 2023;22 (12):1140-9.

3)Veltkamp R, et al:Lancet. 2025;405(10482): 927-36.

4)ClinicalTrials. gov. ID:NCT03950076.

5)ClinicalTrials. gov. ID:NCT03907046.

6)ClinicalTrials. gov. ID:NCT02830152.

7)ClinicalTrials. gov. ID:NCT03243175.

8)ClinicalTrials. gov. ID:NCT04298723.

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