米国心臓病学会(ACC)の70回目となる学術集会が、5月15日から3日間にわたり、完全ヴァーチャルで開催された。臨床に大きな影響を及ぼす大規模試験(Late Breaker)が例年になく多数報告され、非常に充実した学会となった。ここではそれらLate Breakerの中から、新薬、ならびに慢性期疾患管理に関連する大規模研究を紹介したい。
ARB・ネプリライシン阻害薬(ARNi)は、2014年に報告されたランダム化比較試験(RCT)“PARADIGM-HF”において、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS-i)を上回る慢性心不全(HFrEF)転帰改善作用を示した1)。しかし同試験ではNYHA分類Ⅳ度心不全が占める割合は1%未満であり、この患者群に対する有用性は不明だった。
そのため、Ⅳ度心不全のみを対象としてARNiの有用性を、代替評価項目を用いて検討するRCT“LIFE”が実施された。報告者は、ワシントン大学セントルイス(米国)のDouglas L. Mann氏。試験結果に「驚き、そして落胆した」と総括した。
LIFE試験の対象となったのは、「左室駆出率(LVEF)≦35%」で(NT-pro)BNP上昇を認め、かつ心不全増悪因子を有するNYHA Ⅳ度心不全335例。すべて、服用していたRAS-iを中止の上、低用量ARNiの3~7日服用(導入期)に忍容できた例である。
平均年齢は59歳、LVEF平均値は20%で、収縮期血圧平均値が112mmHgだった。ループ利尿薬が93%、β遮断薬も78%、アルドステロン拮抗薬は57%で用いられていた。
これら335例は、低・中等用量のARNi群(バルサルタン[Val]/サクビトリル[Sac]:26/24mg、または51/49mg×2/日)、あるいはARB群(Val:40、または80mg×2/日)にランダム化され、4週間後に忍容最大用量(最大それぞれ103/97mg、160mg×2/日)まで増量し、さらに最低20週間(合計24週間)、二重盲検法で観察された。
その結果、1次評価項目である「NT-pro BNP」濃度は、ARNi群、ARB群とも開始時より低下することなく上昇。ARNi群のほうが上昇幅は小さかったものの、有意差とはならなかった。
一方、臨床転帰は逆の傾向を示した(最長168週間観察)。すなわち、2次評価項目として設定された「心不全イベントなき院外生存期間」は、ARB群の111.2日に対し、ARNi群では103.2日だった(P=0.45)。
さらに3次評価項目の「心血管系(CV)死亡・心不全入院」も、ARNi群におけるハザード比(HR)は1.32となっていた(95%信頼区間[CI]:0.86-2.03)。「心不全入院」のみで比べても、同様の傾向である(HR:1.24、95%CI:0.80-1.93)。なお、いずれもカプランマイヤー曲線は、ランダム化後40~50週間まではARNi群が上を行き、その後小幅だがクロス。そして70週間経過以降には再びARNi群で高値を示すという経過をたどった(70週間経過時の患者数は開始時の約8割)。
安全性は、高カリウム血症がARNi群で有意に多かった(17 vs. 9%、P=0.035)。血管浮腫は、ARB群に1例を認めたのみだった。
PARADIGM-HF試験と結果が異なった理由としてMann氏は、①LIFE試験参加例のほうがより重篤、②PARADIGM-HF試験に比べ導入期が短く、またARNi導入期用量が低かった、③対照薬が異なった(PARADIGM-HFはACE阻害薬[心筋での振る舞いがARBと異なるとMann氏])─の3点を、プレゼンテーションで指摘した。
加えてその後のディスカッションにおいて、RAS-iとNEP阻害による過度の血行動態変動が、代償的なRA系亢進をもたらした可能性にも同氏は言及した。それゆえ、NT-pro BNP上昇はARBに比べ抑制傾向を示しながら臨床転帰が増悪したという理解である。また、NEP阻害に対する生体の代償機転が悪影響を与えた可能性については、今後、検討する予定だという。
本試験は米国NHLBIからの資金提供を受けて実施された。また、コーディネート・センター運営費としてNovartis社も資金を提供した。
ARNiは、RAS-iに比べ、慢性心不全例の転帰を有意に改善することが既に明らかにされている(PARADIGM-HF試験)1)。では、急性心筋梗塞(AMI)後の心機能低下例に対する有用性をRAS-iと比べるとどうなるか。この疑問に答えるべく実施されたRCT “PARADISE-MI”が報告された。報告者はブリガム・アンド・ウィメンズ病院(米国)のMarc A. Pfeffer氏。言わずと知れた、AMI後左室リモデリングに対するACE阻害薬の有用性を初めて証明したSAVE試験2)の主任研究者である。
PARADISE-MI試験の対象は、AMI発症後0.5~7日以内に「LVEF≦40%」か「肺うっ血」を認め、かつCV転帰増悪因子を有する5661例である。心不全既往例は除外されている(ARNiの適応があるため)。世界41カ国から登録され、東アジアでは中国(台湾含む)、韓国が参加している。
平均年齢は64歳、女性は25%弱、アジア人は17%を占めた。AMIに対しては89%が再灌流療法を受けていた。LVEF平均値は36.5%、56%が「Killip分類≧Ⅱ」だった。治療薬としては85%がβ遮断薬、92%が抗血小板薬2剤を処方されていた。なお試験前に78%がRAS-iを服用していた(試験開始前に中止)。
これら5661例は、ARNi(Val :103mg/Sac:97mg)×2/日群とACE阻害薬“ラミプリル”5mg ×2/日群にランダム化され、二重盲検法にて23カ月間(中央値)観察された。今回の患者群におけるこの用量・回数のラミプリル服用の有用性は、プラセボ対照RCT“AIRE”3)において、すでに証明されている。
その結果、1次評価項目である「CV死亡・心不全入院・外来での心不全発症」の発生率はARNi群:6.7/100例・年、ACE阻害薬群:7.4/100例・年となったものの、リスクは有意差に至らなかった(HR:0.90、95%CI:0.78-1.04)。Pfeffer氏によれば、有意差となるためには15%の相対リスク減少が必要だったという。なお、発生率曲線の乖離は、試験開始後3カ月を待たずに始まっていた。これら1次評価項目を個別に検討しても、ACE阻害薬群との間に有意差はなかったが、いずれのイベントもARNi群で減少傾向を示した。また事前設定された探索的解析である「1次評価項目全イベント解析(初発イベントに限定せず)」では、ARNi群における相対リスクは0.79の有意低値となっていた(95%CI:0.65-0.97)。
1次評価項目の事前設定亜集団解析からは、注目すべき2つのサブグループが明らかになった。すなわち、年齢65歳「以上」と「未満」ではARNiの有効性に有意なばらつきがあり(P=0.007)、65歳以上でより有効だった。同様に、AMIに対するPCI施行の有無によるばらつきも認められ(P=0.005)、PCI施行例ではARNiの有効性が高くなっていた。ただしPfeffer氏は、この結果の臨床的意義については言及しなかった。
一方、同氏が特に強調したのは、本試験におけるARNiの安全性である。有害事象、重篤有害事象とも、発現率はACE阻害薬群と差はなく、血管浮腫の発現率も0.5%だった。本試験には導入期間が設けられておらず、また血行動態破綻リスクが高い時期からの使用である(同氏はAMI急性期への静注ACE阻害薬が血行動態を破綻させたRCT “CONSENSUS Ⅱ”4)に言及)。そのような点を考慮すると、ARNiの安全性はかなり高いというのが、同氏の評価だった。
なお、PARADISE-MI試験における死亡率は、ARNi群で7.5%、ACE阻害薬群で8.5%だった(有意差なし)。Pfeffer氏は、同様の患者群を対象とした2003年報告のVALIANT試験5)において、ACE阻害薬群、ARB群とも19 %超が死亡していたと指摘(観察期間中央値はほぼ同一)。この20年間でAMI例の死亡リスクが半減したと述べ、循環器専門医たちを讃えた。
本試験はNovartis社の支援を受けて実施された。また安全性確認のため、非盲検下で延長観察が継続中である(NCT04637555)。
急性非代償性心不全(ADHF)の転帰改善を目指して、過去10年間にさまざまな介入が検討されてきた。にもかかわらず、有用性が証明されたものはない。しかし第Ⅱ相RCT“REHAB-HF”では、患者ごとに細かく評価したフレイルリスクに応じたリハビリテーションを行えば、臨床転帰が改善されるだけでなく、HFpEFに限れば生存も改善される可能性が示唆された。ウェイクフォレスト大学(米国)のDalane W. Kitzman氏が報告した。
REHAB-HF試験の対象は、ADHF入院後の状態が安定し、入院前に自立していた349例である。4m以上の歩行不可能例(±補助具)は除外されている。しかし「除外基準は最低限に絞った」とKitzman氏は説明している。
平均年齢は73歳、約45%に直近6カ月以内のADHF入院歴があった。また97%が「フレイル、またはプレフレイル」(Fried基準)に相当した。
これら349例は、この試験用に考案された「個別リハビリ」追加群と「通常治療」群にランダム化された。
「個別リハビリ」群ではまず、患者の状態について「座位からの補助なし起立能力」と「立位バランス」、「歩行持続時間」、「歩行速度」の4項目をそれぞれ4段階に分け評価。その上で患者ごとに適したリハビリプロブラムを、入院中、退院後通院時、通院終了後の家庭、それぞれの環境に合わせて策定した。通院時リハビリ(3カ月間)の回数は3回/週、非監視下家庭リハビリ(3カ月間)は5回/週とした。同氏らはこれまでの報告から、ADHF例再入院の多くが非CVの要因に起因していた点に注目。身体機能への介入を思いついたという。
一方、「通常治療」群でも入院時は、従来型のリハビリテーションは許可されていた。
なお、本試験における「個別リハビリ」継続率は、ADHFに限らぬ心不全入院例を対象に運動療法の有用性を検討したEJECTION-HF試験に比べ、きわめて高かった。 Kitzman氏は今回のREHAB-HF試験では、リハビリプログラム策定にあたり「継続性維持」が重視された点を強調していた。
その結果、1次評価項目である退院3カ月後のSPPB(short physical performance battery)スコアは、「個別リハビリ」群で1.5の有意高値となっていた(P<0.0001)。SPPB低値はすでに、高死亡リスクとの相関が、心不全を含む高齢入院例で報告されている6)。さらにこの「個別リハビリ」群におけるSPPB改善は、「年齢」や「性別」、「LVEF 0.45の上下」、「NYHA分類の高低」、「さまざまな合併症の有無」や「肥満度」などで分けたサブグループのいずれにおいても認められた。
また退院3カ月後の「6分間歩行距離」と「QOL」、「フレイル」、「抑うつ」も、「個別リハビリ」群で有意に改善していた。
なお退院6カ月後の「全再入院」(1.18 vs. 1.28%)と「心不全入院」(0.57 vs. 0.66%)は「個別リハビリ」群で減少傾向を示した一方、「死亡」は、「個別リハビリ」群で増加傾向が認められた(0.13 vs. 0.10%)。いずれにせよ「検出力不足」(Kitzman氏)の解析である。
ただし同氏が記者会見で明らかにしたところによれば、「個別リハビリ」が「死亡」に与える影響はHFrEFとHFpEFで有意に異なり(交互作用P<0.05)、HFpEF例では相対的に35%の減少が認められたという(in press)。同氏らは現在、この点を確認すべく、より大規模なRCTを計画中である。
本試験は米国NIHとウェイクフォレスト大学から資金提供を受けて実施された。また報告と同時にN Engl J Med誌Webサイトで公表された。
TAVI後DOACの有用性を検討したRCTとしては、2019年の米国心臓協会(AHA)学術集会で報告されたGALILEO試験7)が記憶に新しい。DOAC群の死亡・血栓性イベントリスクは、アスピリン単剤に比べ有意に高かった。
今年は、対照群に抗血小板薬だけではなくビタミンK拮抗薬(VKA)も加えたRCT“ATLANTIC”が報告されたが、やはりDOACは従来治療を上回る優越性を示し得なかった。ソルボンヌ大学(フランス)のJean-Philippe Collet氏が報告した。
ATLANTIC試験の対象は、TAVIに成功した1500例である。抗血栓療法既往の有無は問わない。ただし、抗血栓治療下で脳血管障害をきたした例や頭蓋内出血既往例、また出血高リスク例などは除外されている。
平均年齢は82歳。27%に心房細動が認められた。TAVIの種類は自己拡張型とバルーン拡張型がほぼ半々だった。また“Valve-in-Valve”が5%を占めた。
これら1500例が、VKAないし抗血小板薬(抗凝固療法適応のない例)を用いる「従来治療」群とアピキサバンを用いる「DOAC」群にランダム化され、非盲検下で1年間観察された。アピキサバンの用量だが、65.6%が5mg×2/日を服用していた(残りは2.5mg×2/日)。なお「従来治療」群の9.3%、「DOAC」群の6.8%が追跡不能となった(死亡を除く)。
その結果、1次評価項目である「死亡・脳卒中・心筋梗塞・血栓塞栓イベント[全身性塞栓症、心内/弁血栓、深部静脈血栓症/肺塞栓症]・大出血」の発生率は、「DOAC」群で18.4%、「従来治療」群は20.1%だった。「DOAC」群におけるHRは0.92(95%CI:0.73−1.16)となり、優越性の証明には至らなかった。対照群を、VKA服用例と抗血小板薬服用例に分けて比較しても同様だった(群間差<0.1%、事前に層別化)。
また、安全性1次評価項目である「生死にかかわる出血(出血死含む)・大出血」の、「DOAC」群におけるHRは1.02(95%CI:0.72−1.44)だった。
一方、上記1次評価項目から「弁血栓」を除いた比較では(後付解析)、「DOAC」群におけるHRが1.12(95%CI:0.88−1.44)と高い傾向を認めた。
同様に、2次評価項目である「死亡・心筋梗塞・脳卒中/一過性脳虚血発作」も、「DOAC」群でリスク上昇傾向が見られた(10.5% vs. 8.26%、HR:1.32、95%CI:0.95−1.85)。
死亡も同様である(7.2% vs. 5.5%、HR:1.39、95% CI:0.92−2.09)。特に抗血小板薬のみとの比較では、「DOAC」群における死亡HRは1.86(95%CI:1.04−3.34)の有意高値となっていた(△2.5%、後付解析)。
本試験はBMS社とPfizer社の資金提供を受けて実施された。
薬剤溶出性ステント(DES)留置後に開始する抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、疾患ごとの虚血再発リスク別で異なるものの、一定期間後は単剤に変更するのがコンセンサスとなりつつある。これまではアスピリン単剤が一般的だったが、クロピドグレルのジェネリックが汎用される現在、いずれを選択すべきか。そのような疑問に応えるべく、韓国で5000例以上を登録したRCT“HOST-EXAM”を実施したところ、1次評価項目全体ではクロピドグレルのほうが良好だったものの、死亡では逆傾向を示していた。ソウル大学校(韓国)のHyo-Soo Kim氏が報告した。
HOST-EXAM試験の対象は、DES留置後6~18カ月間、虚血・出血イベントのいずれもきたさなかった5438例である。倫理的な要請以外、除外規定は特に設けられていない。
平均年齢は64歳、約75%が急性冠症候群(ACS)へのDES留置例だった。また34%が糖尿病、61%が高血圧、69%が脂質異常症、13%が慢性腎不全を合併していた。これら5438例は、アスピリン100mg/日群とクロピドグレル75mg/日群にランダム化され、非盲検下で観察された。
24カ月間観察の結果、1次評価項目の「死亡・心筋梗塞・脳卒中・ACSによる入院・大出血」の発生率は、アスピリン群:7.7%、クロピドグレル群:5.7%となり、クロピドグレル群における有意なリスク低下が認められた(HR:0.73、95%CI:0.59-0.90)。このリスク低下は、「年齢」や「性別」、「各種合併症」の有無だけでなく、「喫煙歴」の有無別に検討しても一貫していた。なお、CYP2C19遺伝子多型は調べていないため、サブグループ解析は行われていない。
一方、これら1次評価項目を個別にみると、クロピドグレル群ではアスピリン群に比べ、脳卒中(0.5 vs. 1.0%)、ACS入院(2.5 vs. 4.1%)、大出血(1.2 vs. 2.0%)は有意に低リスクとなっていたものの、死亡(1.9 vs. 1.3%)リスクは高い傾向にあった(HR:1.43、95%CI:0.93-2.19、△0.6%)。
この結果の長期妥当性を確認すべく、Kim氏らはこのコホートをさらに10年間観察する“HOST-EXAM Extended study”を開始したという。
本研究は韓国保健福祉部、ならびに製薬会社4社(試験薬販売社含む)コンソーシアムから資金提供を受けて実施された。また報告と同時に論文が、Lancet誌ウェブサイトに掲載された。
昨年のAHA学術集会で報告されたRCT“STRENGTH”8)では、オメガ3脂肪酸によるCVイベント抑制作用が確認されず、同じくオメガ3脂肪酸でCVイベント減少を報告したRCT“REDUCE-IT”9)の結果を否定するものとなった。
STRENGTH試験報告者はこの違いを、対照群の違い(コーン油と鉱油)で説明していたが(No.5043参照)、試験で用いられたオメガ3脂肪酸の違いが影響している可能性も出てきた。ドコサヘキサエン酸(DHA)は用量依存性に、エイコサペンタエン酸(EPA)のCV保護作用を減弱させるかもしれない。大規模観察研究の結果として、インターマウンテン医療センター(米国)のViet Le氏が報告した。
同氏らは、同施設が組むINSPIREレジストリ内の2万5000名弱から、1994~2012年に冠動脈造影を初回施行した987名をランダム抽出し、血中EPA、DHA濃度と死亡・CVイベント(心筋梗塞・脳卒中・心不全入院)の関係を調べた。
対象の平均年齢は61.5歳、男性が57%を占めた。冠動脈造影上で病変を認めなかった例の割合は38.8%だった。そして10年間で、これら987例中の31.5%が「死亡・CVイベント」をきたした。
観察開始時のオメガ3脂肪酸濃度と「死亡・CVイベント」発生リスクの関係を見ると、EPAでは血中濃度四分位群が高くなるに従い、発生リスクが減少する有意な傾向が認められた。この傾向は、DHA併用の有無に影響を受けていなかった。
一方、DHA濃度は、未補正ならば「死亡・CVリスク」と相関を認めないが、EPA併用の有無で補正すると、DHA濃度が高くなるほど「死亡・CVリスク」も高くなる傾向が明らかになった。合併症による影響を補正しても同様である。このため、DHA濃度が高くなるほど、EPAによる「死亡・CVイベント」抑制作用は減弱されると考えられた。
そこで、987例をEPA/DHA比「≦1」群(444名)と「>1」群(543名)の2群に分けて「死亡・CVイベント」リスクを比較したところ、EPA濃度に対しDHA濃度が相対的に低い「>1」群では「≦1」群に比べ、HRは0.69の有意低値となっていた(95%CI:0.55-0.86)。
その上で、オメガ3脂肪酸によるCVイベント抑制作用を検討したエビデンスを振り返りたい。抑制作用が認められたREDUCE-IT9)、そしてわが国から報告されたJELIS10)の2試験はいずれも、EPAのみを服用している。一方、ネガティブ試験に終わった冒頭のSTRENGTH8)、そしてVIT AL11)、ASCEND12)、OMEMI13)試験はいずれも、EPAに加え、380~800mgのDHAを併用していた。
CVイベント抑制の観点からは、EPAへのDHA追加には懸念がある─、Le氏はそう結論した。
本発表には研究資金についての言及はなかった。
【文献】
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