HPVワクチン接種の積極勧奨が差し控えとなってから5年が過ぎた。日本産科婦人科学会は18日、一刻も早い積極勧奨再開を求め、プレスセミナーを開いた。
藤井知行理事長は、「接種勧奨再開の必要性の検討は、医学的・科学的に考えて解決すべき。それ以外の問題を考慮することは理解できない」と指摘。ワクチンの有効性・安全性の科学的データは出尽くしているとした上で、「今後も、一刻も早い積極勧奨再開を求めていきたい」と強調した。
阪大の喜多村祐里准教授は、HPVワクチンの接種中止を求めるロビー活動などによって接種率が低下したアイルランドやデンマークの事例を提示した。アイルランドでは、2015年には80~90%の接種率に到達したものの、16年には50%近くにまで低下。しかし、ソーシャルメディアを中心とする草の根運動により現在は60%超まで回復しているという。デンマークでは16年に急落したものの、世界保健機関(WHO)の後押しを得つつ、国を挙げて熱心なキャンペーン活動を実施した結果、1年足らずで回復したという。
喜多村氏は日本の状況を「異常事態」と問題視し、「一旦積極勧奨を中止すると、再開するのは非常に難しい。ボトムアップで接種率を上げていく活動が必要ではないか」と指摘した。
喜多村氏はまた、副反応被害者とされている患者からのアンケートで「ワクチン接種の積極勧奨は再開すべきだ」との意見も多く挙がっていることを紹介。どんなワクチンでも副反応は起こるとし、厚生労働省の姿勢に対して「患者に寄り添うために再開しないというロジックは成り立たない」との見解を述べた。
セミナーではまた、北大のシャロン・ハンリー氏(女性医療システム学)が、アジア、アフリカの発展途上国であるマレーシアやルワンダ、ブータンでもワクチン接種率が90%を超えていると報告。先進国では9価ワクチンがスタンダードとなっており、71カ国で承認されているという(6月17日現在)。男性への接種も77カ国で承認されていることを踏まえ、日本が取り残されている状況に危機感を表した。