月経困難症とは,月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状を言う。下腹部痛,腰痛,腹部膨満感,嘔気,頭痛,疲労・脱力感,食欲不振,いらいら,下痢および憂うつの順に多くみられる。月経前に不調が出現し,月経開始とともに減退ないし消失する月経前症候群や月経前気分不快症とは区別して考えるべきである。子宮内膜症,子宮腺筋症,子宮筋腫,帝王切開瘢痕部症候群などの,器質的疾患に伴って生じるものとそうでないものに大別され,前者を器質性月経困難症,後者を機能性月経困難症という。器質的疾患については他稿に譲り,本稿では主として機能性月経困難症について述べる。
機能性月経困難症の診断には,過去の月経歴を含めた詳細な問診を行うとともに,身体診察,内診,経腟超音波検査,必要に応じて血液・尿検査やCT,MRIなどにより器質的疾患の除外を行う。月経時であっても,これまでにない強い疼痛を訴える場合には,偶発的に発症した虫垂炎,骨盤腹膜炎,尿管結石などと鑑別する必要がある。また,特に月経周期が不規則な女性では,流産や異所性妊娠による不正性器出血を月経と誤認している場合があるため,妊娠の可能性については確実に否定する必要がある。機能性月経困難症は,一般的に初経後2~3年してから始まり,経血量の多い月経初日および2日目頃に症状が増強することが多く,経腟分娩を経験すると軽快する。
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