【質問者】
丸山正統 丸山記念総合病院副院長/産婦人科部長
【子宮鏡による慢性子宮内膜炎の診断とその治療をマスターすれば,着床率向上が期待できる】
不妊症のスクリーニング検査として子宮鏡検査を行うべきか,現在も議論があります。2016年に雑誌Lancetに2つの不妊検査としての子宮鏡検査に関する無作為化比較試験が報告されましたが,生児獲得率に有意差を認めませんでした。そのため体外受精開始前の子宮鏡検査は妊娠成績向上には寄与しないという結果になりました。
最近,体外受精で複数回良好胚を子宮内に移植しても妊娠しない反復着床不全の女性の約30~60%に,子宮内膜局所の持続的な炎症を伴う慢性子宮内膜炎(chronic endometritis:CE)や超音波検査で見つけることのできない子宮内膜ポリープが存在することがわかってきました。CEは基本的に無症状で,かつ一般的な不妊症のスクリーニング検査で見つけることができません。その診断は原則,子宮内膜生検を行い,免疫染色でCD138陽性の形質細胞を確認します。その原因の多くは子宮内感染であり,その原因となる細菌やウイルスは様々で,Escherichia coli,Enterococcus faecalis,Gardnerella vaginalis,Streptococcus spp,Mycoplasma spp,Chlamydia trachomatisなどが挙げられます。ただし子宮内膜組織検査で形質細胞を認めても,子宮内細菌培養検査で何も認めないこともあり,CEの標準診断はCD138免疫染色による形質細胞の確認です。ただしCD138染色は特殊な検査であり,施設によって診断できないことも多いです。
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