【質問者】
山﨑 浩 筑波大学医学医療系循環器内科講師
【植込み後の閾値上昇が課題】
His束ペーシングに適した症例と成績に関しては,これまでの臨床試験が参考となります。2000年,持続性心房細動と慢性心不全を合併した症例に対し,恒久His束ペーシングと房室結節アブレーションが施行され,心機能は改善しました。ただし,スタイレットデリバリーによるリード植込み成功率は67%と低く,植込み後の閾値上昇が課題として示されました。以降,恒久His束ペーシングの対象はHis束-プルキンエ伝導に障害を持つ症例へ拡大されました。2015年,カテーテルデリバリーシステムによる恒久His束ペーシング成功率は,AHブロック症例では93%と高く,HVブロック例では,その多くはHis束内伝導障害によるものの,成功率がやや低い(76%)と報告されました。2017年,ペーシング依存例では,His束ペーシング群では右室ペーシング群と比較し死亡および心不全入院が少ないと報告されました。最新の米国ガイドライン(2018年)では,恒久His束ペーシングのクラスⅡa適応として左室収縮能低下(36~50%)かつ右室ペーシング依存(>40%)の房室ブロック症例を,Ⅱb適応としてAHブロック症例を推奨しています。
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