BMIが35kg/m2以上の高度肥満症は,内科的治療に抵抗性の場合,外科的治療が適応となります。近年,わが国における手術症例は増加していますが,諸外国と比べるとまだ社会に十分浸透していないように思えます。そこで,わが国における減量手術の位置づけについて解説して頂き,今後の展望についてもご教示頂きたいと思います。四谷メディカルキューブ・笠間和典先生にご回答をお願いします。
【質問者】
佐伯浩司 群馬大学大学院消化管外科教授
【わが国では認知度も実施数も低く,保険適用も再考が必要である】
現在,BMIが25kg/m2を超える過体重の人は世界全体で約22億人おり,BMI 30kg/m2以上の肥満に該当する人は約7億1200万人と推定されています。WHOの報告では,わが国はBMI 30kg/m2以上の成人の割合は4.5%で,世界で166位と肥満率が低い国とされています。しかし,2015年の糖尿病有病者数は世界9位と,肥満の順位とは大きく乖離しています。すなわち,わが国は肥満人口に比して糖尿病人口が多い国であると言えます。
肥満に対する外科治療は「減量手術」とも呼ばれます。肥満外科手術は1950年代から行われており,腹腔鏡下手術の導入により爆発的に増加,現在では世界中で毎年約70万件が行われ,上部消化管手術の中で最も多くを占めています。わが国では2000年から腹腔鏡下減量外科治療が始まり,2014年から腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険適用となりました。現在は年間800件程度と徐々に増えてきていますが,他国に比べるとまだ圧倒的に少ない状況です。
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