TIPS-3では報告①での比較に加え、ポリピル群、プラセボ群の中でさらに、アスピリン配合剤群とプラセボ配合剤群へのランダム化を行い、CV疾患1次予防例に対するアスピリンのCV疾患抑制作用も検討している。結果として、この比較における1次評価項目である「CV死亡・脳卒中・心筋梗塞」のアスピリン配合剤群におけるハザード比[HR](対プラセボ配合剤)は0.86となったものの、95%信頼区間[CI]が「0.67−1.10」となり、有意差には至らなかった。CV 1次予防におけるアスピリンの有用性は、またもや否定された形である。
さて、この比較と報告①で紹介した「ポリピル vs. プラセボ」の比較を組み合わせると、「ポリピル(降圧薬3剤+スタチン)・アスピリン合剤」(ASA含有ポリピル)と「プラセボ・プラセボ合剤」(プラセボ)の比較が可能になる。TIPS-3試験では、この比較も事前設定のサブ解析として予定されており、その結果をSalim Yusuf氏(住民健康研究所、カナダ)が報告した。
まず観察期間を通じた収縮期血圧の差は、 ASA含有ポリピル群(1429例)でプラセボ群(1421例)に比べ5.8mmHgの有意低値だった。またLDL-Cも、プラセボ群に比べ、19.4mg/dL、有意に低下していた。これらの改善幅は、TIPS-3試験全体と同等である(報告①参照)。
にもかかわらず、本比較における1次評価項目とされた「CV死亡・脳卒中・心筋梗塞・心不全・蘇生に成功した心停止・動脈血行再建術施行」の、ASA含有ポリピル群における対プラセボ群HRは0.69(95%CI:0.50−0.97、4.1% vs. 5.8%)の有意低値となった。上記評価項目の内訳を見ると、ASA含有ポリピル群では、CV死亡の減少が著明だった。
この結果を受けYusuf氏は、ASA含有ポリピルは有用であると主張していた。
本試験はWellcome Trustほかからの資金提供を受けて実施された。また報告と同時に、NEJM誌にオンライン掲載された。