糖尿病患者が高齢化する中で,がん・認知症・サルコペニアは糖尿病三大合併症と言っても過言ではありません。糖尿病患者では同年代の非糖尿病者に比べてサルコペニアが多く,フレイルもきたしやすいことから「糖尿病連携手帳 第4版」では骨格筋指数(skeletal muscle mass index:SMI)や握力を計るページを設けました。
糖尿病でサルコペニアが起こるメカニズムの最新知見,および種々の糖尿病治療薬や療養指導で期待されるサルコペニア予防作用の可能性に関する最新の考え方について,当該領域におけるわが国を代表するエキスパートでいらっしゃる神戸大学・小川 渉先生にご解説をお願いします。
【質問者】
野見山 崇 国際医療福祉大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科学教授/国際医療福祉大学市川病院糖尿病・内分泌代謝センター長,糖尿病・代謝・内分泌内科部長
【インスリン作用不足や高血糖などが糖尿病のサルコペニア発症に関わる】
サルコペニアは加齢による骨格筋量の減少とそれに伴う身体活動能力の低下に特徴づけられる症候群であり,転倒や骨折,フレイルのリスクとなり,寿命の短縮にも関連します。
糖尿病患者では,加齢に伴う筋量減少や筋力低下が促進されることが知られており,サルコペニアの罹患率も高いことが報告されています。サルコペニアの診断基準については現在も様々な検討が行われており,2014年にAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)のコンセンサスレポートにより診断の推奨アルゴリズムが発表され,2019年に診断基準が改訂されました。いずれの診断基準を用いるかによって異なるものの,平均年齢68.2歳の日本人2型糖尿病患者のコホートで,握力低下または歩行速度の低下とSMIの低下で診断したサルコペニアの罹患率は7%程度であったとの報告があります1)。
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