初経が早く,初産が遅く,生涯出産数が少なくなった現代女性は子宮内膜症の発症リスクが高い。若年の月経困難症は子宮内膜症に進展するリスクが高いことも判明しており,鎮痛のみならず適切なホルモン療法を早期に開始するメリットが注目されている
子宮内膜症は月経がある限り再発・再燃を繰り返すことが多く,卵巣チョコレート囊胞は閉経後も悪性化のリスクがあるため,生涯にわたっての長期管理が必要である
破裂,感染,悪性化予防の観点からは手術が優先されるが,反復手術を避けるため,対症療法,ホルモン療法など「内科的治療」を女性のライフプランに沿って計画的に行う必要がある。婦人科外来担当医はそのキーパーソンとしての役割を期待されている
月経困難症とは,月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状のことを指す1)。下腹痛,腰痛,腹部膨満感,嘔気,頭痛,倦怠感,下痢などの症状が毎月反復し,女性のQOL(quality of life)を著しく低下させる。しかし「月経は病気ではないから」と,我慢している女性は現代でも少なくない。若年者に多く,原因疾患が見つからない機能性月経困難症が,将来の子宮内膜症に進展する可能性も指摘されてきている。
子宮内膜症は,子宮内膜様組織が本来あるべき子宮内腔以外の組織や臓器などに存在し増生するために生じる病態を言い1),不妊や卵巣癌のリスクを高めることからも,早期に診断して治療を開始すること,また女性の生涯にわたって治療を継続する必要があることがわかってきた。しかし,わが国では婦人科検診や受診に対して抵抗感を抱く女性が非常に多く,月経痛などの症状を我慢できなくなって受診した際には病状が進行しており,治療に難渋することが少なくない。そんな中で,月経困難症や子宮内膜症の治療における婦人科外来担当医(主に開業医)の役割は非常に大きい。その役割と留意点についてまとめる。
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