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食道良性腫瘍[私の治療]

No.5095 (2021年12月18日発行) P.39

松田 諭 (慶應義塾大学医学部一般・消化器外科)

北川雄光 (慶應義塾大学医学部一般・消化器外科教授)

登録日: 2021-12-17

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  • 食道良性腫瘍は,上皮性と非上皮性にわけられる。良性であるがゆえに,いずれも治療介入が検討されることは少ないが,一部悪性腫瘍との鑑別に注意を要する疾患が含まれる。また,非悪性腫瘍であっても,食道粘膜下腫瘍などにおいて,食道内腔を占拠することにより狭窄症状や疼痛を伴う場合には治療適応となる。一方で,食道に局在する腫瘍の切除は,一定の侵襲を伴うこととなるため,その適応決定は慎重に行う必要がある。

    ▶診断のポイント

    食道良性腫瘍は,上皮性,非上皮性いずれにおいても症状を伴うことは少なく,多くは上部消化管内視鏡検査で発見されることが多い。

    食道良性腫瘍のうち,上皮性としては食道乳頭腫の頻度が高く,頻度は低いものの過形成ポリープや炎症性ポリープなどが含まれる。一方で非上皮性腫瘍の鑑別疾患は多く,粘膜下腫瘍〔神経鞘腫,平滑筋腫,脂肪腫,gastrointestinal stromal tumor(GIST)など〕のほか,顆粒細胞腫,毛細血管性血管腫,リンパ管腫などが挙げられる。また,上皮性悪性腫瘍である,低分化型食道癌,類基底細胞癌,神経内分泌癌が,粘膜下腫瘍様の形態を呈することがあるため,注意が必要である。

    その診断には,上部消化管内視鏡検査が用いられるほか,CTやpositron emission tomography(PET)検査などにより壁外成分の大きさや,悪性腫瘍の可能性について評価をする必要がある。非上皮性腫瘍の中でも,比較的表層に位置する腫瘍には,顆粒細胞腫,毛細血管性血管腫,リンパ管腫,脂肪腫などが含まれ,一部は生検での確定診断が可能である。一方で,固有筋層を主体とする平滑筋腫,神経鞘腫,GISTに関しては,通常の上部消化管内視鏡検査による確定診断は困難である。粘膜下腫瘍の内訳として,食道では平滑筋腫が大部分を占め,悪性腫瘍であるGISTの頻度は低い。しかし,原則として食道切除を要するGISTの場合,その治療侵襲は高いことから,疑われた場合には,超音波内視鏡下穿刺吸引生検を検討することが望ましい。鑑別すべき悪性腫瘍としては,固形がんのリンパ節転移による壁外性圧排や縦隔腫瘍などが挙げられる。

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