医学部における漢方教育のあり方を巡る討論が2月11日、オンラインで開催された漢方医学教育シンポジウム(日本漢方医学教育振興財団主催)で行われ、「アクティブラーニング」の効果などが確認された。
学生が自主的・能動的に取り組む学習形態アクティブラーニングを漢方教育に取り入れている千葉大和漢診療学准教授の並木隆雄氏は、特にアクティブラーニングの1つである「Fishbowl(フィッシュボール)」形式の授業が効果的だったと報告した。
Fishbowl形式の授業では、学生を同人数の2グループに分け、Aグループが「討論者」として半円形に座る。Bグループは討論者を囲むようにして外側に座り、目の前の人を評価する「評価者」となる(図参照)。1~2問討論した後、役割を入れ替え、Bグループが討論者、Aグループが評価者となって同じように討論をする。
千葉大で2021年度に行ったFishbowl授業では、Aグループは「感冒の3症例の臨床推論」(葛根湯証/麻黄湯証/麻黄附子細辛湯証)、Bグループは「婦人科3症例の臨床推論」(桂枝茯苓丸証/当帰芍薬散証/加味逍遙散証)を題材にした。
西洋医学の知識と重なりが少ない漢方教育では、アクティブラーニングができるレベルまで事前に知識を高める必要があることから、授業前にeラーニング(90分)を受講させ、ディスカッションの題材はeラーニングで一度学習した内容にしたという。
並木氏は、アンケートで「授業が有用でない」と評価する学生がいなくなるなどFishbowl授業は「大変効果的な教育手法であることが分かった」とし、「学生の中には『これまでの授業の中で一番面白かった』という声もあった」と述べた。
ただ、漢方医学を学習する前から興味度が低かった学生は、Fishbowl授業を受けた後も興味度が低い傾向があるとし、「DVDを見せるなどeラーニングの学習前に漢方医学に興味を持たせる工夫が必要」と課題を挙げた。
討論の中で広島大医学教育センター長の蓮沼直子氏も「学生の場合、動機付けが大きなポイントになる」と指摘。「自分や家族が漢方薬を飲んだことがあるという学生は興味を持って授業に臨むが、漢方薬が保険収載されていることを知らない学生や、漢方薬をおまじないのようなものと考えている学生も少なからずいる。教育効果を上げるためには導入の部分が重要」とコメントした。