1型糖尿病であれば絶対的なインスリン適応である。2型糖尿病の場合,経口血糖降下薬で血糖コントロールが不十分な場合に,注射製剤による治療が検討されることが多い。2型糖尿病の注射治療は,インスリン以外にGLP-1受容体作動薬による治療がある。
糖尿病の家族歴,肥満,運動不足などを背景に,高血糖を健診などで指摘されるのが典型的である。健診未受診者,放置症例,治療中断症例は,著しい高血糖およびそれに伴う合併症を伴う場合もある。
典型的には比較的若年で急激に発症し,著しい高血糖・口渇・多飲・多尿・体重減少・インスリン欠乏状態でケトーシスをきたしていることが多く,速やかにインスリン治療を開始する。
食事・運動療法から開始し,経口血糖降下薬を複数併用してもコントロールが不十分な場合に,注射薬剤による治療を検討する。
肥満や食べ過ぎで血糖コントロールが困難な症例には,血糖降下作用と食事抑制作用を持つGLP-1受容体作動薬の処方を検討する。少量から開始し漸増すると,悪心などの消化器系副作用が出にくい。GLP-1受容体作動薬により血糖コントロールが改善してきた場合は,スルホニル尿素(SU)薬やグリニド薬など低血糖をきたす薬剤を漸減中止していくと,低血糖の不安なく食事・運動療法に取り組めるようになる。
肥満がなく,痩せる必要はないが,経口血糖降下薬の自己管理が難しい高齢者などには,週1回注射のデュラグルチドを使用しながら経口薬を整理していくのも一案である。ただし,デュラグルチドでも体重減少をきたす症例もあるので,サルコペニア症例には注意して使用していく。
インスリン自己分泌が低下している症例にはインスリン注射を検討する。肥満・インスリン抵抗性のある場合には,インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合注射から開始すると,インスリン単独で治療を開始するよりも体重が増加しにくく低血糖もきたしにくい。ただし,GLP-1受容体作動薬とインスリンの配合比率が固定されているため,GLP-1受容体作動薬が最大量投与されている場合に,インスリンとGLP-1受容体作動薬配合注への切り替えをすると,GLP-1受容体作動薬の用量が低くなり血糖・体重のコントロールが悪化する場合があるので,注意が必要である。
肥満はなく,インスリン自己分泌低下が顕著な症例は,前治療の経口血糖降下薬に持効型インスリンを併用する。持効型インスリンは少量(0.1~0.2単位/体重kg)から開始し,漸増していく。
経口血糖降下薬とGLP-1受容体作動薬に持効型インスリンなどの組み合わせで血糖コントロールが得られない場合には,持効型インスリンと超速効型インスリンによる強化療法が必要となる。その場合には,血糖管理上,自己血糖測定の導入が安全で有効である。強化療法が必要な場合には,専門医による管理が望ましい場合が多い。
1日1回の持効型インスリンと毎食前の超速効型インスリンによる強化療法が必要である。糖尿病専門医に紹介するのがよい。自己管理能力が高く,経済的にも余裕があれば,インスリンポンプを用いた治療は,血糖コントロール上も低血糖予防上も非常に有益な治療となる。
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