大腸癌はわが国で年間新たに約16万人が診断される,部位別罹患数が最も多い悪性疾患である。「進行大腸癌」は大腸壁の固有筋層以深に浸潤するものと定義される。
主症状は血便や腹痛であるが,症状が出にくく,予後の改善のためには検診などによって早期の段階で診断することが重要である。外科的切除が治療の中心となり,診断のポイントは原発巣の壁深達度,リンパ節転移と範囲,遠隔転移と切除可能性である。
手術療法(系統的なリンパ節郭清を伴う腸管切除)が基本となる。隣接臓器浸潤がある場合には合併切除が行われるが,局所進行のために切除不能と判断され,原発巣による症状がある場合には,人工肛門造設やステント挿入により症状緩和が図られる。放射線療法や薬物療法によるダウンステージによって切除可能となる場合がある。
Stage Ⅲ(リンパ節転移あり)症例の術後には補助化学療法が推奨される。
進行直腸癌に対しては,欧米においては局所再発の低減を主眼とした術前化学放射線療法(CRT)が標準治療であり,わが国のガイドラインでも推奨されるようになった。最近は全身薬物療法をCRTの前あるいは後に追加で行うtotal neoadjuvant therapyが注目され,特にハイリスク症例に対する有効性が期待される。
大腸癌の遠隔転移は肝や肺に多く,外科的切除により予後の改善が期待される。しかしながら切除不能である場合も多く,その場合には全身薬物療法が行われる。
切除不能と判断された遠隔転移が,全身薬物療法の後に切除可能となった場合には切除(conversion surgery)によって予後の改善が期待される。
切除可能な遠隔転移に対する術前あるいは術後の補助化学療法の有効性は確立していない。特に,肝転移の切除後の補助化学療法の有効性に関しては,最近わが国のランダム化比較試験(JCOG0603)によって無増悪生存期間は良好であったものの,全生存期間には有意差が示されなかった。
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