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月経困難症[私の治療]

No.5139 (2022年10月22日発行) P.46

田村 功 (山口大学大学院医学系研究科産科婦人科学)

登録日: 2022-10-25

最終更新日: 2022-10-19

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  • 月経困難症とは,月経期間中に月経に伴って生じる病的症状と定義される。主な症状としては,下腹部痛,腰痛,頭痛があり,重症の場合はQOLの低下を引き起こす。子宮筋腫や子宮内膜症などに起因する器質性月経困難症と,器質的疾患を認めない機能性月経困難症に分類される。

    ▶診断のポイント

    月経時に下腹部痛,腰痛などを認めることから,問診から診断は容易である。そのほかにも,腹部膨満感,嘔気,頭痛,疲労・脱力感,食欲不振,いらいら,下痢,憂うつなど様々な症状を伴うことがある。月経困難症が疑われる場合は,内診,超音波検査,MRI検査などで月経困難症の原因となる器質的疾患が存在しないかを調べる。これらに異常所見を認めない場合は,機能性月経困難症と診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    器質性月経困難症に対しては,原疾患に対する薬物療法・手術療法を行う(詳細は他稿に譲る)。本稿では機能性月経困難症に対する治療について説明する。

    月経困難症の発生には子宮内膜で産生されるプロスタグランジンの関与が大きいので,プロスタグランジン合成阻害薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有効である。よって,まずはNSAIDsの頓用による疼痛コントロールを試みる。疼痛出現後からの頓用では効果が不十分な場合もある。その場合は,月経開始時あるいは開始直前から定時内服を行う。

    NSAIDsで疼痛コントロールが不良な場合は,低用量経口避妊薬/低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(OC/LEP)やプロゲスチン製剤によるホルモン療法を行う。OC/LEPの投与方法としては,毎月休薬期間を設け月経を起こす周期投与と,休薬期間を3~4カ月に1回とし月経回数を減少させる連続投与がある。連続投与では月経回数が減少するので,過多月経を伴う症例にはよい適応である。しかし,月1回の月経がないことを不安に感じる患者も存在するので,希望に応じて連続投与,周期投与を選択する。

    OC/LEPの副作用には血栓症があるため,40歳以上の患者,肥満症例(BMI>30)では慎重投与,35歳以上で1日15本以上の喫煙者は投与禁忌となっている。このような症例や,OC/LEP無効症例ではプロゲスチン製剤の内服に変更する。また,子宮内黄体ホルモン放出システム(levonorgestrel-releasing intrauterine system:LNG-IUS)は,プロゲスチンが子宮内に少量放出され続けることで効果を発揮するdrug delivery systemである。いったん子宮内に装着すると5年間使用可能であり,内服薬よりもコンプライアンスが高いというメリットがある。しかし,不正出血の副作用や挿入位置の定期的な観察のための通院が必要となるため,患者の希望に応じて選択する。

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