消化管の憩室は壁の一部が外側に袋状に突出した状態であり,固有筋層の有無で真性と仮性に分類される。
メッケル憩室は,胎生期の臍腸管(卵黄管)遺残による真性憩室で,回盲弁から1mまでの回腸の腸間膜付着部対側に発生する。頻度は人口の1~4%とされ,男性に多い。約80%は無症状であるが,憩室炎,出血(憩室内の異所性胃粘膜から産生される酸によって潰瘍を生じる),腸重積(反転した憩室が先進部になる),絞扼性腸閉塞(憩室と臍の間の索状物や癒着が原因)を生じることがある。
大腸憩室の大部分は,腸管内圧亢進と腸管壁の脆弱化により血管貫通部を通じて生じる後天性の仮性憩室である。米国白人では遠位大腸に多いが,日本人では近位大腸に多く,年齢とともに遠位の割合が増加し多発する。大部分は無症状であるが,便通異常・腹部膨満感・蠕動痛を訴えることがある。時に憩室炎,出血をきたし,多発憩室が顕性・不顕性に炎症を繰り返すと,狭窄や癒着を生じる。
無症状例は,CT・大腸内視鏡・消化管造影で偶然発見されることが多い。憩室炎は誘因なく生じ,下痢を伴わない腹痛で,わが国では近位大腸に多いが,年齢とともに遠位大腸の割合が増加し重症化しやすい。血液検査で炎症所見を認め,悪化すれば腹膜刺激症状を伴う。CTや超音波による憩室の同定と,壁肥厚や血流増加で診断する。周囲液体貯留・腹水・free airなどを伴う場合は,膿瘍・腹膜炎・穿孔が疑われる。内視鏡はむしろ禁忌である。
憩室出血は下部消化管出血のうち最も多く,メッケル憩室を除けば高齢者や男性に多い。突然発症し腹痛を伴わない。メッケル憩室や近位大腸憩室の場合は便色がやや黒いが,出血速度が速ければ赤いまま排出される。24時間以内に大腸内視鏡を実施することが提案され1),出血点が同定できない場合は造影CT・血管造影などが行われることもある。メッケル憩室出血が疑われる場合は,胃粘膜に集積する99mTcO4シンチが従来用いられてきた。近年は小腸内視鏡での検出が増加している。
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