心室細動を起こし青壮年期の心臓突然死の原因になる代表的な遺伝性不整脈疾患で,右側胸部誘導でブルガダ型心電図という典型的なST上昇を認める。全体での頻度は1/2000人であるが,アジア・東南アジアではさらに高い。男女比は10:1で男性に多く,夜間安静時に心室細動を起こすことが多い。
自然発症またはピルシカイニド負荷後であっても,正常肋間,一肋間上あるいは二肋間上で,タイプ1ブルガダ型心電図(1つ以上の右側胸部誘導にてcoved型でJ点で2mm以上のST上昇)が認められれば確定診断となる。ブルガダ症候群の心電図は,日内変動,日差変動があるため,非タイプ1ブルガダ型心電図(サドルバック型)の症例でも繰り返し心電図をとることが必要である。
ブルガダ症候群の治療を考える際には,まずリスクの層別化が重要である。心肺停止の既往がある症例は,再発の可能性が高く最もハイリスクであるため,植込み型除細動器(ICD)植込みを行う。また,明らかに不整脈原性失神(突然の失神,痙攣や失禁を伴う夜間苦悶様呼吸など)を有する場合は,心肺停止の既往例についでリスクが高いため,ICD植込みを行う。そのような症例では植込み後に心室細動を再発することがあるため,キニジンの内服を行う。
ブルガダ症候群で原因不明の失神を伴う場合は,反射性失神など他の原因の失神を除外するために,ヘッドアップティルト検査を行ったり,植込み型心電計を挿入することもある。電気生理学的検査を行い,心室期外刺激(2連発以下)で心室細動が誘発されたらICD植込みを行う。誘発されなかった場合は,慎重な経過観察とする。
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