【質問者】高橋紀代 千里山病院集学的痛みセンター
【漢方治療は身体全体から病因をとらえる診療が特色で集学的診療と相性の良い治療である】
慢性痛診療の理想的な形のひとつとして,西洋医学と補完代替医療を組み合わせた統合医療の必要性が高まっています。2018年に改定された国際疾病分類第11版(ICD-11)でも“臨床的な分類を取り入れる”方針のもとに「伝統医学の病態」の章が加わりました。こうした流れも,現代の医療において統合医療が不可欠となってきたことを示しています。
日本では約150種類の漢方薬が保険適用となっており,漢方治療は日本において最も取り入れやすい補完代替医療と言えるでしょう。西洋医学の慢性痛治療は,痛みを取り巻く様々な要因に対して多職種のチームで診療して多面的,包括的にアプローチしていく集学的診療が理想的とされています。一方,漢方医学は,本来痛みに伴う様々な症状や所見を身体全体からとらえるアプローチをしており,いわば集学的診療のアプローチそのものを行う医学です。以上から,慢性痛において西洋医学と漢方医学の統合医療は診療の方向性が似た良い組み合わせと言えます。
実際の慢性痛の統合医療では,漢方治療は①~③に示すような様々な段階で様々な役割や位置づけを担っています。
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