小腸腫瘍は,全消化管腫瘍のうち1~5%程度と稀な腫瘍である。悪性腫瘍と良性腫瘍にわかれるが,治療としては切除が基本であり,内視鏡治療と外科的治療がある。リンパ腫には化学療法が奏効するものが多い。
診断の契機としては,消化管出血や狭窄症状が挙げられる。また,他の目的で撮影された腹部CTなどの画像検査でたまたま指摘される場合もある。臨床的に小腸腫瘍を疑う場合は造影CT,カプセル内視鏡,バルーン内視鏡などを用いて精査を進め,確定診断をめざす。
小腸の原発性悪性腫瘍としては,がん,リンパ腫,消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)の頻度が高い。転移性小腸悪性腫瘍としては肺,消化管,前立腺などに由来するものが多い。
良性腫瘍としては過誤腫,腺腫,血管腫,脂肪腫,リンパ管腫などが認められるが,その中でも遺伝性に小腸過誤腫が多発するポリポーシスであるPeutz-Jeghers症候群は,臨床的重要性が高い。Peutz-Jeghers症候群では口唇に特徴的な色素沈着を認めることが多く,診断の手がかりとなる。STK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とし,常染色体優性遺伝形式をとるが,患者が発端者の場合には必ずしも家族歴を有しないので,注意が必要である。
小腸腫瘍の治療で重要なことは,早期に発見して治療介入し予後を改善することである。原発性小腸癌は,以前は発見が遅れ予後不良とされていたが,ダブルバルーン内視鏡の導入など診断能の向上により,根治的外科手術が可能な症例が増えている。小腸GISTも内視鏡的に確定診断をつけることで,腹腔鏡補助などの低侵襲治療での根治術が可能な症例が増えている。小腸悪性リンパ腫においても,生検病理診断も含めた内視鏡診断で確定することにより,開腹術を施行せずに化学療法を施行できる症例が増えている。
Peutz-Jeghers症候群に関しては,ガイドラインでも示されている通り,症状がなくても8歳頃を目安にサーベイランスを開始し,10mmを超えるようなポリープを認めた場合は,ダブルバルーン内視鏡を用いて内視鏡的ポリープ切除もしくは阻血治療を行うようにしている。ポリープが増大して腸重積を起こした場合,開腹手術が必要となる危険性が高く,あらかじめポリープを処理することで開腹手術を防止することが重要である。いったん開腹手術が行われると,術後の小腸癒着によりその後の内視鏡によるサーベイランスや治療が困難となってしまうため,注意が必要である。
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