潰瘍性大腸炎大腸の粘膜と粘膜下層を中心にびまん性の慢性炎症を起こす疾患で,再燃と寛解を繰り返す。慢性に続く下痢,腹痛,粘血便などを認め,重症例・難治例では全大腸摘出術の適応となることがある。わが国では指定難病に認定され,推定患者数は軽症を含めて22万人とされている1)。典型的には病変は直腸から口側に向けて連続性に広がり,罹患範囲によって直腸炎型,左側大腸炎型,全大腸炎型に分類される。30歳以下の成人に多いが,小児や50歳以上の年齢層にもみられる。原因は不明であるが,発症には腸管バリア機能の異常や腸管免疫恒常性の破綻が関与すると考えられている。罹病期間が長い症例では,大腸癌の発症リスクが高まることが知られている。
直腸から連続するびまん性連続性の炎症であること。初回発症時や急性増悪時は,感染症との鑑別が特に重要となる。多くの患者で,初診時の数カ月前から粘血便などの自覚症状を有することが多い。確定診断には大腸内視鏡と生検病理診断が重要である。
まず緊急外科手術を考慮しなければならない劇症型・重症型を鑑別する。「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班の基準2)に従って判断するが,高熱,激しい腹痛,大量の血性下痢,中毒性巨大結腸症は手術リスクの高い患者であることが考えられ,早期から外科と連携する。中等症以下の患者では鑑別診断(クローン病や他の炎症性疾患),増悪因子や治療抵抗性因子(clostridioides difficile感染やサイトメガロウイルス腸炎の合併),病変範囲,臨床的・内視鏡的重症度,これまでの治療歴,といった情報を収集し治療戦略を立てる。薬物治療の分岐点はステロイド全身投与に対する反応性で,ステロイド依存性やステロイド抵抗性の症例は難治例と定義される。
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