外陰には恥丘,陰核,大陰唇,小陰唇,大前庭腺,腟前庭が含まれ,外陰と腟にまたがる腫瘍は外陰癌,外子宮口に及んでいるものは子宮頸癌として扱う。わが国では外陰癌と腟癌を合わせて年間500例程度が発症し,半数がⅠ~Ⅱ期の局所病変である。組織型は扁平上皮癌(SCC)が大半を占め,外陰ではPaget病,腟では腺癌がその次に多い。
外陰癌は手術摘出標本の病理学的所見により進行期を決定する。外陰癌の進行期はFIGO 2021に準拠し,Ⅲ期とⅣA期が改定された(日産婦2022)。すなわち,骨盤骨固着浸潤または固着あるいは潰瘍を伴う鼠径リンパ節転移のみをⅣA期とし,尿道や腟の上部,膀胱・直腸粘膜への浸潤はⅢA期とする。Ⅲ期のリンパ節転移はサイズのみで細分類する。腟癌は術前進行期分類(FIGO 1971,日産婦2014改)を用いる。
悪性黒色腫は扁平上皮癌とは生物学的特徴が異なり,腫瘍の厚さや潰瘍の有無が予後と関連する。治療もその生物学的特徴を標的として行うため,皮膚悪性腫瘍指導専門医と協同して取り扱う。実際,悪性黒色腫に対する薬剤のほとんどは産婦人科領域では保険適用がなく,皮膚科や腫瘍内科で取り扱うほうが治療選択肢も広がる。
外陰SCCの前癌病変には,HPV感染を起点とする病変〔HSIL(VIN2~3)〕と高齢者の角化型病変(differentiated VIN:dVIN)がある。頻度はHSILが高く,がん化率はdVINのほうが高い。間質浸潤を評価するため,トレパンやデルマパンチⓇを用いて皮下組織を含めて生検する。肉眼的に明らかな腫瘍がなくても,高齢者で塗布薬連用によっても痛がゆさが改善しない場合や,外陰に「白・黒・紅」いところができて広がってきた場合には生検を行う。
腟病変はコルポスコピーで観察後に生検する。腺癌では複数箇所に病変を認めることがあり,腟鏡のブレードの陰の病変を見落とさないように留意したい。
浸潤癌ではMRIとCTないしPET-CT等にて,局所と鼠径・骨盤リンパ節の評価を行う。
外陰癌では診断時に半数以上が70歳以上の高齢者であり,全身状態(PS)の評価も行う。
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