早期食道癌は,食道の固有の粘膜に発生するものが食道扁平上皮癌であり,Barrett食道に発生するものがBarrett腺癌である。一部に特殊型があるが,前述の2者が大多数を占める。わが国では扁平上皮癌が多数である。いずれの組織型であっても粘膜癌であれば,基本的にリンパ節転移の頻度は低く,内視鏡的切除の適応となる。粘膜下層癌となるとリンパ節転移の可能性が出てくる。様々な画像診断が有用である。
内視鏡診断が主体となる。扁平上皮癌であれば,通常観察での領域性を持った色調の変化,わずかな凹凸面が拾い上げ診断のカギとなる。また,それらはnarrow band imaging(NBI) によるbrownish areaとして認識されることが多い。特に最新の内視鏡機器を用いた場合,口腔内から食道にかけては,NBIによる観察のほうが病変の拾い上げが容易なことが多い。一度,病変を拾い上げることができれば,拡大内視鏡で日本食道学会分類のB1〜3の血管観察が決め手となる。背景粘膜の上皮乳頭内血管ループ(intra-papillary capillary loop:IPCL)と比較して,病変部では血管径が増大し,その構造もいびつとなる。拡張・蛇行・口径不同・形状不均一の四徴を見て診断することができる。B1血管単独であれば,M1〜2までのがんであることが多く,B2では,M3〜SM1を中心としたがんとなる。B3ではSM2以深の可能性が出てくる。
Barrett食道に出てくる粘膜癌の拾い上げは,やはり領域性を持ったびらん性の局面の拾い上げである。炎症の場合は,胃炎と同様にはけで刷いたような境界所見となり,外に凸の局面とはなりにくい。腫瘍の場合は,やはり背景粘膜に対して領域性を呈するような外に凸(expansive)な所見を呈することが多い。低分化型では,粘膜固有層や粘膜下層で浸潤性の発育をすることがしばしばあり,領域性を持った不規則な局面には留意することが重要である。また,腺癌においても,NBI拡大で表面模様の不規則性をもって早期がんを疑うことになる。
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