近時の欧米ガイドラインでは、心血管系(CV)高リスクや慢性腎臓病合併の2型糖尿病(DM)に対し、メトホルミンを差し置いて第一選択になり得るともされたSGLT2阻害薬だが、東アジア人ではCV低リスク2型DM例でも第一選択になり得る可能性が示された。台湾・国立陽明交通大学のHao-Chih Chang氏らが4月9日、Journal of the American Heart Association誌で報告した。
解析対象は、台湾在住でSGLT2阻害薬かメトホルミンを180日以上服用していたDM3万8496例である。心不全や脳・心・末梢血管疾患既往のある例は除外されている。台湾公的保険データベースから抽出した。
これら3万8496例の中からSGLT2阻害薬を服用していた全例(964例)と、それらに傾向スコアを用いて背景因子をマッチさせたメトホルミン服用1928例(3万5604例除外)、この2群間で「総死亡」と「CV転帰」、「腎転帰」を比較した。
傾向スコアマッチ後集団の平均年齢は60歳弱、男性が6割を占めた。血糖降下薬以外のDM治療薬併用率は、レニン・アンジオテンシン系阻害薬が約5%、スタチンも5%弱だった。
・全体
最長5年間追跡後、「総死亡」リスクはSGLT2阻害薬群で有意に低くなっていた。ハザード比は0.47 (95%信頼区間[CI]:0.23-0.99)、発生率は「3.2 vs. 4.9%」である。
一方、「CV死亡」リスクは両群間で有意差を認めなかった。HRは0.62 (95%CI:0.26-1.48)、発生率はSGLT2阻害薬群0.6 vs. メトホルミン群1.1%だった。
興味深いことに、「HF入院」リスクもSGLT2阻害薬群における有意低下は認めなかった。HRは0.76(95%CI:0.44-1.30)、発生率は1.7 vs. 2.4%。末期腎不全も同様である(HR:0.68 [95%CI:0.29-1.59]、「0.6 vs. 0.9%」)。また脳卒中リスクにも両群間に有意差はなかった。
・亜集団解析
全体ではSGLT2阻害薬群で有意なリスク低下を認めた「総死亡」だが、「65歳」の上下で二分すると、SGLT2阻害薬によるリスクの有意低下を認めたのは「65歳未満」例のみだった(交互作用P=0.008)。
同様に「末期腎不全」も、「65歳未満」のみで比較するとSGLT2阻害薬群でリスクは有意に低下していた。他方「65歳以上」では、有意ではないものの、SGLT2阻害薬群におけるリスク上昇傾向を認めた(HR:3.30。交互作用P=0.04)。
Chang氏らはこの結果から、65歳未満でCV低リスクの2型DM例には、SGLT2阻害薬がメトホルミンよりも有用ではないかと考察していた。なおSGLT2阻害薬による総死亡リスク低下の内訳提示、理由についての考察はなかった。
本研究に製薬会社からの資金提供はないとのことである。