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過労死問題に取り組む医療者の環境整備を [お茶の水だより]

No.4750 (2015年05月09日発行) P.9

登録日: 2015-05-09

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▼厚生労働省の過労死等防止対策推進協議会で、国の取るべき対策をまとめた大綱の策定に向け、議論が進んでいる。同協議会は昨年施行された過労死等防止対策推進法を受けて設置されたもので、同協議会は今年6月に大綱を取りまとめる予定だ。
▼4月に厚労省が示した大綱案は、週労働時間や年次有給休暇の取得率などに関する数値目標の設定と、過労死の発生・機序の実態解明に向けた調査研究を進めることが柱。研究については、労働者の健康状態・生活習慣・勤務状況と、循環器疾患などの発症状況について、長期的な追跡調査を行うとしている。
▼大綱案でも言及されているように、労働安全衛生法の改正により今年12月から従業員50人以上の事業所にはストレスチェックの実施が義務化されることとなっており、産業医をはじめとする産業保健スタッフの業務は増加している。一方、過重労働の問題に現場で対応する医療従事者に関する大綱案の記載は「過重労働やメンタルヘルスに関する相談に応じる医師等に対する研修を実施」「産業医科大学や産業保健総合支援センター等を通じて、産業医等の人材育成等について、体制も含めた充実・強化を図る」などと、現時点では曖昧な内容にとどまっている。
▼時代の変化によって産業医の役割は質・量ともに拡大しているにもかかわらず、産業医の選任義務は以前と変わらず事業場の規模で一律に線引きされている。こうした状況を踏まえ、日本産業衛生学会の産業医部会は2010年に『産業医のあり方・研修・育成の方向性と、他の産業保健職との連携の強化について』と題する提言をまとめている。提言は「嘱託産業医の多くは産業医業務に時間や労力を割くことには限界がある」として、単に法律で産業医の役割を増やすだけでは「実際の産業現場で機能するとは考えづらい」と指摘。事業主が産業医と必要な産業医業務を検討・整理することや、労働安全衛生法に産業看護職の位置づけを明記し、他の産業保健スタッフを最大限活用することを求める内容だ。
▼厚労省の協議会では、勤務医の夫をうつ病による自殺で亡くした中原のり子委員が産業医の権限強化を提案している。過労死防止対策を実効性あるものにするためには、医療従事者が過重労働問題に効率的に取り組むための環境整備を大綱に盛り込むことが重要だ。より長期的には、限られた医療資源をどう有効活用し産業衛生の向上に結びつけるか、議論が必要であることは言うまでもない。

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