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子宮頸癌コルポスコピー下生検でのCIN1/2の外来管理【わが国のガイドラインではHPVタイピング検査の実施を推奨】

No.4798 (2016年04月09日発行) P.57

松本光司 (筑波大学医学医療系産科婦人科学准教授)

登録日: 2016-04-09

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

組織診断で確認されたCIN1(軽度異形成)およびCIN2(中等度異形成)について,筑波大学・松本光司先生にエビデンスをもとにご教示頂ければ幸いです。
(1) human papillomavirus(HPV)検査の必要性。
(2) 定期的な細胞診の間隔。
(3) コルポスコピーや組織診断を再度考慮すべき条件。
(4) 円錐切除術を勧めるべき条件。
(5) 患者に自然治癒・現状維持・CIN3(高度異形成,上皮のがん)以上への進展のそれぞれの確率をどのように説明するか,などの外来管理の実際について。
【質問者】
寺内公一:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 女性健康医学講座准教授

【A】

CIN1についてはフォローアップが原則で,治療を推奨しているガイドラインは世界中にありません。CIN2は海外のガイドラインでは治療の対象となっていますが,わが国のガイドラインではCIN2も基本的には経過観察,後述するように症例によって治療も容認するという立場です(文献1)。CIN3はすべてのガイドラインで治療の対象となっています。
さて,ご質問の件ですが,細胞診がlow-grade squamous intraepithelial lesion(LSIL)かつコルポスコピー下生検での結果がCIN1もしくはCIN2という日本人女性570例を3~4カ月ごとに細胞診とコルポスコピーでフォローし,病変の自然消失とCIN3への進展の割合をモニターした多施設共同コホート研究のデータがあります(文献2)。以下,(1)~(5)についてお答えします。
(1)上記のデータによれば,CIN2が5年以内にCIN3へ進展する可能性はHPV16, 18, 31, 33, 35, 52, 58型の7タイプのいずれかが陽性の場合は40.5%であるのに対して,陰性の場合は8.3%と報告されています。同様に,CIN1が5年以内にCIN3へ進展するリスクは同7タイプ陽性の場合は16.6%であったのに対して陰性の場合は3.3%にすぎません。このようにHPVタイプによってCIN3への進展リスクは大きく異なるため,わが国のガイドラインではCIN1/2の進展リスクを評価するためにHPVタイピング検査を行うことを推奨しています(文献1)。HPV45型は日本人での検出頻度は低いのですが,欧米では3番目に頸癌から検出されるタイプですので,上記7タイプにHPV45型を加えた8タイプを要注意のグループとしてわけて管理することを推奨しています。
(2)フォローアップする場合の診療間隔は,CIN3への進展リスクが8タイプ陽性CIN2>8タイプ陽性CIN1>8タイプ陰性CIN2>8タイプ陰性CIN1の順で高かったため,ガイドラインではそれぞれ3~4カ月,4~6カ月,6カ月,12カ月の間隔でフォローすることを提案しています(文献1)。
(3)フォローアップ中にCIN3を疑うHSIL・AS
C-Hなどの高度細胞診異常が出現するような場合には,再度コルポスコピー検査・生検にて再評価を行うことが勧められます。
(4)フォローアップ中の再評価でCIN3と診断される場合はもちろん子宮頸部円錐切除術の適応になりますが,進展を疑って再評価した生検でCIN2以下であってもこのような高度細胞診異常が持続する場合には,診断的円錐切除術が必要になることがあります。上記のコホート研究で病変が自然消失したケースではその約7割で1年以内,約9割で2年以内に病変が消失していたことから(文献2),わが国のガイドラインでは1~2年フォローアップして自然消失しないCIN2は治療の対象としてよいとされています(文献1)。また,8タイプ陽性のCIN2はCIN3への進展リスクが非常に高いことから,フォローアップとせずに最初から治療することも容認されています。
(5)前述のようにHPVタイプによって病変消失・進展のリスクは大きく異なるわけですが,コホート研究のデータに基づいてHPVタイピング検査をしない場合には「CIN1の約7~8割は自然消失するが,約1割が進展する。CIN2では約6割は自然消失するが,約2割が進展する」と私は外来では説明しています。年齢別には最も病変消失率が高い20歳代女性では,過剰治療を避けるためになるべくフォローの方針としています。

【文献】


1) 日本産科婦人科学会, 他, 編・監:産婦人科診療ガイドライン─婦人科外来編2014. p38-41.
2) Matsumoto K, et al:Int J Cancer. 2011;128(12):2898-910.

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