【Q】
ピロリ菌感染は特徴的な内視鏡所見がいくつかありますが,ピロリ菌感染後にそれらが出現する時間的推移について教えて下さい。
また,除菌後は感染後の進行とは逆の順番で消失していくと考えてよいですか。 (福岡県 K)
【A】
ピロリ菌の長期持続感染により,ほぼ全例に慢性萎縮性胃炎が発生することは異論がないところです。したがって,特徴的な内視鏡所見としては,慢性萎縮性胃炎の所見が当てはまります。すなわち,RAC(regular arrangement of collecting venules)の消失と血管透見像・退色調粘膜(萎縮),浮腫状粘膜,皺襞の異常(腫大,蛇行,消失),胃体部~穹窿部の点状発赤・びまん性発赤,白濁粘液,鳥肌状粘膜(結節状粘膜)などの所見です。ほかに随伴するものとして,頻度は低いのですが,黄色腫,胃過形成性ポリープなどが挙げられます。これらの所見のうち,感染後の早い時期に出現するのは鳥肌状粘膜であり,その後,年余をかけて,上記の萎縮性胃炎像となってくると考えられています。
さて,ピロリ菌除菌成功後にどのようにこれらの所見が改善・消失していくかについてですが,ミクロの病理学的所見では萎縮は改善するものの,マクロの血管透見像・退色調粘膜といった内視鏡的萎縮所見は,基本的には残存します。しかし,筆者らの検討では,胃体部~穹窿部の点状発赤・びまん性発赤や浮腫状粘膜,白濁粘液,皺襞の腫大などは除菌1~3カ月後と早期に消失し,それに伴い萎縮境界が不鮮明化し,一部にRACが戻って萎縮範囲の縮小がみられることもあります。さらに,12~15カ月後の長期経過では,鳥肌状粘膜も平滑化し光沢が出て正常化することもあります。もちろん,これらの改善や消失は1年後以上と年の単位で認められることも多いので,年余にわたる経過観察が必要です。
▼ Ohkusa T, et al:Am J Gastroenterol. 2000;95(9):2195-9.
▼ Ohkusa T, et al:Ann Intern Med. 2001;134(5):380-6.
▼ 大草敏史, 他:日臨. 1999;57(1):173-8.