卵巣癌の標準的化学療法はパクリタキセル(T)とカルボプラチン(C)の併用療法(TC)であるが,半数以上の症例が再発するため,再発がんに対する二次化学療法の確立が喫緊の課題である。
従来は,初回化学療法終了後から再発までの期間が6カ月以上のプラチナ感受性がんに対しては,初回化学療法と同様のTCが推奨されてきたが,近年の様々なランダム化比較試験の結果,選択肢が広がってきている。ゲムシタビン(G)とCの併用療法(GC)(文献1),リポソーム化ドキソルビシン(PLD)とCの併用療法(PLDC)(文献2)などが代表的な二次化学療法である。GCではC単剤と比較し無増悪生存期間(PFS)の有意な改善がみられている(文献1)。また,PLDCは非劣勢試験ではあるが,TCに比べPFSの有意な改善がみられている(文献2)。さらに,Cによる過敏反応がPLDCでは少ないことが確認された(文献2)。
一方,再発までの期間が6カ月未満のプラチナ抵抗性がんでは,多剤併用療法が単剤より勝るという報告はなく,QOL維持や症状緩和を第一義として,初回治療と交差耐性のない薬剤の単剤投与が選択される。具体的には,G,PLD,塩酸イリノテカン,トポテカンなどが挙げられる。
今後は,婦人科領域では後塵を拝している分子標的治療薬の導入が待たれるところである。ベバシズマブなどを併用した化学療法が欧米で報告されているが,わが国でも治験を重ね検討すべきであろう。その際,既存の抗癌剤とは異なった有害事象の発生にも注意を払うべきである。
1) Pfisterer J, et al:J Clin Oncol. 2006;24(29): 4699-707.
2) Pujade-Lauraine E, et al:J Clin Oncol. 2010;28 (20):3323-9.