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抑肝散が部分的にしか奏効しない場合のもう一手  【黄連解毒湯を追加投与することで効果が増強】

No.4809 (2016年06月25日発行) P.52

岡本英輝 (千葉大学和漢診療科特任講師)

登録日: 2016-06-25

最終更新日: 2016-10-29

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精神科領域における様々な症状に対する抑肝散の効果が,近年多数報告されている。とりわけ,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)に対する抑肝散の有用性については,周知のこととなりつつある(文献1)。事実,2010年には,Lewy小体型認知症患者のBPSDに対する抑肝散の有効性が初めて治療ガイドライン上に記載された(文献2)。
しかし,抑肝散が部分的にしか奏効しない場合,結局はメジャートランキライザーなどの向精神薬と併用せざるをえないのであろうか。なんとか漢方薬のみでもうひと工夫,対処することはできないだろうか。
実は古来,特に易怒性や不眠が強い症例に対しては,よく黄連や山梔子などほかの生薬を抑肝散に加えて用いていた。つまり,抑肝散にひと工夫を加えることで,もう少し広い範囲のあるいは重篤な精神症状に対応してきたのである。
抑肝散に黄連と山梔子を加えるのは,エキス製剤全盛の現代においては,抑肝散に黄連解毒湯を追加することで代用できる。実際,両薬剤の併用による治療効果増強が学会などで報告されつつある(文献3)。もうひと工夫加えることにより,漢方薬の有用性が今後さらに広がることを期待したい。

【文献】


1) Okamoto H, et al:Neuropsychiatr Dis Treat. 2014;10:1727-42.
2) 「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会, 編:認知症疾患治療ガイドライン2010. 日本神経学会, 監. 医学書院, 2010.
3) Okamoto H, et al:Neuropsychiatr Dis Treat. 2013;9:151-5.

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