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腹腔鏡下悪性腫瘍手術の最前線─ 特に広汎子宮全摘術のコツ 【骨盤神経温存の確実性が向上。開腹手術とは異なる手術手技の習得が求められる】

No.4832 (2016年12月03日発行) P.59

鈴木 直 (聖マリアンナ医科大学産婦人科学講座教授)

寺井義人 (大阪医科大学/同大学附属病院産婦人科准教授)

登録日: 2016-12-01

最終更新日: 2016-11-30

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  • 婦人科領域は,他領域と比べて古くから先進的に内視鏡を用いた診断や治療を行ってきましたが,悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術は外科領域や泌尿器領域と比較して,国内の導入が若干遅れているのが現状です。現在,婦人科悪性腫瘍領域における腹腔鏡下手術は,初期子宮体癌のみ(2014年4月に保険診療として認可)にとどまっています。婦人科腫瘍医は細胞診断や組織診断,また画像診断などを駆使して診断し,外科的また内科的な治療を施し,再発や再燃時の治療も行った上で,最後は緩和医療を提供します。
    腹腔鏡下手術は婦人科悪性腫瘍患者に対する集学的治療のツールのひとつになりつつあります。2014年12月には,初期子宮頸癌に対する腹腔鏡下広汎子宮全摘出術が先進医療として認定されました。そこで,本領域の若手リーダーの1人である大阪医科大学附属病院・寺井義人先生に,腹腔鏡下悪性腫瘍手術の最前線,特に広汎子宮全摘術のコツに関してご解説頂ければ幸甚です。

    【質問者】

    鈴木 直 聖マリアンナ医科大学産婦人科学講座教授


    【回答】

    腹腔鏡下手術は,現在では胃癌,大腸癌をはじめとする様々な領域の悪性腫瘍に対して行われていますが,婦人科領域では,不妊症例の検査から始まったため,子宮筋腫や良性卵巣腫瘍などの良性疾患に対して腹腔鏡下手術が行われ普及してきました。婦人科悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術は諸外国と比べて遅れていましたが,2014年4月に初期子宮体癌に対して腹腔鏡下根治術が保険適用となり,わが国でも広がりつつあります。また,先進医療ではありますが,2014年12月に1A2期から2A1期までの子宮頸癌に対する腹腔鏡下広汎子宮全摘手術が認可され,ようやく始まったのが現状です。

    子宮頸癌の主治療である広汎子宮全摘手術は,1921年に京都大学の岡林秀一教授により発表された岡林術式が世界的に有名ですが,この術式は子宮頸部を大きく切除することによって排尿障害が必発するという問題と,骨盤腔内の奥深くの血管,靱帯処理を行うため術中出血が多くなる危険性があることで技術的に難しい手術とされています。その後,根治性を保ちながら排尿障害を軽減するための神経温存広汎子宮全摘出手術の開発や様々なデバイスの登場により,出血量の軽減や排尿障害の軽減に向けた工夫がなされてきましたが,いまだ完全ではありません。

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