2013年に発表された米国のガイドライン1)では,スタチン以外の薬剤には動脈硬化性心血管疾患リスク低下の根拠はなく,高強度,中強度のスタチンのみが推奨され,また,LDLコレステロール(chol)やnon-HDL-cholの治療目標値を設定できるような根拠はない,とされた。これに対し日本動脈硬化学会は,①サブ解析などのエビデンスも考慮し,スタチン以外の薬剤の使用も妥当であり,またスタチンはわが国の保険診療に則った用量を用いる,②わが国の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく,加えて患者の治療に対するアドヒアランスも考慮し,従来通りの管理目標値2)を維持する,との見解を示した3)。
また,15年の米国の行政機関や,わが国の厚生労働省からの発表では,健常者において食事によるcholの摂取量と血中chol値との間の相関を示す根拠が十分ではないことから,食事でのchol摂取制限がなくなった。これに対し日本動脈硬化学会は,高LDL-chol血症患者については,これまで通りcholや飽和脂肪酸の摂取量に注意する必要がある,との見解を示した3)。
【文献】
1) Stone NJ, et al:J Am Coll Cardiol. 2014;63(25 Pt B):2889-934.
2) 日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版. 日本動脈硬化学会, 2012.
3) 日本動脈硬化学会. [http://www.j-athero.org/]
【解説】
永島秀一 自治医科大学内科学講座内分泌代謝学講師
石橋 俊 自治医科大学内科学講座内分泌代謝学講師 教授