たかが便秘,されど便秘。便秘は患者のQOLを大きく低下させている。傾聴し,共感することで良好な関係を構築する
器質性便秘,特に大腸癌を見落とさないように細心の注意を払うべきである
患者背景を把握し,便秘のタイプを見きわめ,一人一人に応じた対応が必要である
排便の機序,薬物の作用をわかりやすく説明し,理解を得る
排便回数ではなく,便の性状を良くすることを目標としてもらう
刺激性下剤を長期間使用してきた重症便秘では,刺激性下剤の使用量を減らしていき,最終的には離脱することをめざす
当科では週に1コマを「お通じ外来」として,便通異常の診療を集中的に行っている。以下に日常臨床での便秘患者へのアプローチ法をまとめた。
主訴が便秘であっても,訴えの内容は様々である。便の硬さ,排便頻度,随伴症状,排便困難感などについて確認する。当院では診察前に記入してもらう問診票も活用している(図1)。
現病歴とともに,患者が何を求めて受診したのか,症状についてどのように考えているかを知ることはその後の診療に役立つ。四六時中,便のことばかり考えて抑うつ状態になっている場合もあり,傾聴し,受容,共感するよう心がける。便秘症状はともかく,誰にもわかってもらえないという苦しみは初診時でも和らげることができる。精神科疾患の存在が疑われれば,速やかに専門医にコンサルトする。
また,既存症,薬剤歴,既往歴,検診の受診状況,家族歴を必ず問診する。他施設外科で大腸癌術後の経過観察中であり,再発による便通異常だったこともある。根掘り葉掘り聞き出さなければわからないことがある。抗うつ薬,オピオイド,カルシウム拮抗薬などに注意し,薬剤性便秘を除外する。最近は整形外科領域の慢性疼痛にオピオイド貼付薬の処方が増えている。
続いて腹部の診察を行う。腹部膨隆,手術瘢痕などを見る。便秘では腸内ガス貯留により打診上鼓音となることが多い。便秘型過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome with constipation:IBS-C)で痩せた人の場合は,S状結腸の数珠状の硬便,腸索を触知することがある。高齢者であったり排便困難が認められれば,直腸指診を行う。腫瘤,糞便の有無,血液付着,痔,肛門のトーヌスなどを確認する。
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