漢方薬の使用上の注意にも「妊娠または妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」とあります。次の方剤を証に従って投与する場合,その催奇形作用を含めた安全性についてご教示下さい。
①川芎茶調散:かぜによる頭痛を止める
②小柴胡湯加桔梗石膏:清熱による咽の痛みを止める
③平胃散:胃の不調を平らか(安らか)にする
(東京都 N)
妊娠中のかぜや便秘などに対して,西洋薬ではなく漢方を希望する妊婦は少なくありません。漢方薬は西洋薬より安全というイメージが強くあるようです。実際に現時点では,少なくとも漢方エキス製剤においては,催奇形も含め,妊娠に関する副作用の報告はなされていません。
しかし,原則的に妊娠中に服用禁忌とされている生薬はあります。巴豆や大戟,また麝香や水蛭,虻虫などの動物性のものなどは,強い駆瘀血作用があり,流産や早産の起因となると考えられているからです1)。これらの生薬を含む医療用エキス製剤は,現在製造されていません。したがって,基本的には医療用エキス製剤は妊娠中でも安全に内服できると考えられます。
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