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トランスレーショナルリサーチにかかる暗雲─基礎研究にもエビデンスを [J-CLEAR通信(47)]

No.4728 (2014年12月06日発行) P.50

谷 明博 (加納総合病院循環器内科部長,J-CLEAR会員)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-16

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  • 近年,基礎研究で得られた発見を診断や治療に結びつける橋渡し研究=トランスレーショナルリサーチ(TR)が,戦略的重点科学技術として推進されている。しかし,このTRに最近暗雲が立ち込めている。特にモデル動物を用いて薬効が確かめられた薬剤をヒトに用いて臨床試験を行うと成績が良くないのである。

    循環器領域では急性心筋梗塞に対するエリスロポエチンの心不全予防効果が,モデル動物では効果が認められているのにもかかわらず1),臨床試験ではREVEAL試験2)やRED-HF試験3)などで効果が否定されている。

    神経領域では特に顕著である。その中でもアルツハイマー病治療薬が代表的である。AN-1792,phenserine,flurizan,semagacestat,bapineuzumab,solanezumabは,いずれもアルツハイマー型認知症のアミロイド仮説に基づいた,アミロイドβ蛋白に対するワクチンや抗体である。みなモデル動物での効果が示されているが,臨床試験はことごとく失敗し,開発中止という結果に終わっている。

    モデル動物でみられた効果が,なぜヒトではみられないのだろうか。動物と人間との違いと言ってしまえばそれまでだが,それだけなのだろうか。逆に考えてみよう。もし,アミロイド仮説が間違っていて,臨床試験の結果のほうが正しいのなら,モデル動物で薬剤の効果が現れたのはなぜなのだろうか。

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