食道癌に対する内視鏡治療には,早期癌に対する内視鏡的切除術(ER)と進行癌による嚥下障害などに対する緩和的治療がある
ERは臓器・機能温存可能な低侵襲治療であるが,広範な切除は狭窄の原因となるため,予防法としてステロイド局注または経口投与が検討されている
ER後に粘膜筋板以深の浸潤が確認されれば,追加治療が必要になることもある
食道癌に対する化学放射線療法後の局所のみの遺残再発に対して,粘膜内遺残再発であればER,粘膜下層から固有筋層までであれば光線力学療法(PDT)が有効である
食道癌に対する内視鏡治療は,早期癌に対する根治的な低侵襲治療から進行・再発癌に対する緩和的治療まで多岐にわたる(表1)。早期癌に対する内視鏡治療は,わが国において開発され世界中に広がっているが,狭帯域光内視鏡(narrow band imaging:NBI)などによる画像強調内視鏡検査の普及により早期発見例が増加し,その役割は今後さらに大きくなると期待されている。一方,食道は食物の通過経路であるため,進行・再発食道癌による食道閉塞は嚥下障害というQOLを大きく損なう症状に直面する。また,治療後の狭窄も起きるため,嚥下障害に対する緩和的治療は食道癌診療の上でも重要である。
食道癌に対する根治的な低侵襲治療には内視鏡的切除術(endoscopic resection:ER)があり,治療法として内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)がある(図1・2)。最近では,大きな病変でも一括切除できるESDが広く普及しているが,安全面などでの課題はまだ残る。EMR/ESDは,わが国の食道癌の90%以上を占める扁平上皮癌の治療法として開発され,臓器および機能温存可能な治療として普及している。食道壁は内腔側から上皮,粘膜固有層,粘膜筋板,粘膜下層,固有筋層,外膜という構造をしており,「食道癌診断・治療ガイドライン」においてはEMR/ESDは,リンパ節転移の可能性の低い粘膜固有層までの壁深達度の癌に絶対適応とされている。
粘膜筋板への浸潤癌では10%程度,粘膜下層浸潤になると20%以上のリンパ節転移のリスクがあるので,根治をめざした外科手術または化学放射線療法が追加治療として考慮される。
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