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(1)切除不能進行大腸癌に対する分子標的薬の位置づけ [特集:大腸癌における分子標的薬の課題]

No.4796 (2016年03月26日発行) P.18

大北仁裕 (香川大学医学部・医学系研究科臨床腫瘍学講座)

辻 晃仁 (香川大学医学部・医学系研究科臨床腫瘍学講座教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 抗EGFR抗体薬,マルチキナーゼ阻害薬は毒性の点でやや使いにくいが,すべての薬剤の使用で最良の治療成績が得られる。可能であれば投与したほうが生存期間延長が望める

    RAS遺伝子野生型患者の一次治療においてFOLFOXあるいはFOLFIRIに併用する分子標的薬は,抗VEGF抗体薬,抗EGFR抗体薬のどちらを先に使用してもよい

    RAS遺伝子野生型患者では,急速な腫瘍縮小効果や大きな縮小率を期待する場合,抗EGFR抗体薬の使用が勧められる

    二次治療以降では,今後ramucirumab,afliberceptが登場予定であるが,その際にベバシズマブを使用するbevacizumab beyond progression(BBP)を期待するか,ramucirumabやafliberceptに変更するかを比較した報告はなく未確定である

    RAS遺伝子野生型で抗EGFR抗体薬を投与されていない症例では,二次治療以降で抗EGFR抗体薬を使用可能である

    FOLFOXIRIに対する分子標的薬の上乗せ効果は,現状ではベバシズマブでのみ認められているが,現在わが国での保険適用はない

    レゴラフェニブは三次治療以降(salvage line)で標準治療として用いられる

    1. 大腸癌における分子標的薬の登場

    大腸癌に対する分子標的薬として,抗VEGF(vascular endothelial growth factor)抗体薬の1つであるベバシズマブが登場して久しい。抗EGFR(epidermal growth factor receptor)抗体薬であるセツキシマブやパニツムマブが標準治療の1つとして登場してから6〜8年が経とうとしており,新たにレゴラフェニブなどが用いられるようになった。本稿では,切除不能進行大腸癌に対する現在の分子標的薬の適応,今後使用される可能性のある薬剤を含めた分子標的薬の位置づけを述べる。

    2. RAS遺伝子野生型患者に対する分子標的薬

    従来,KRAS遺伝子のみ解析が行われていたが,2015年4月よりRAS(ALL RAS)遺伝子解析を行うことができるようになった。RAS遺伝子のstatusにかかわらず,ベバシズマブの上乗せ効果があることはメタ解析で明らかにされており1),RAS遺伝子変異型患者に対してはベバシズマブを投与することに議論の余地はない,と考える。
    FOLFIRIにパニツムマブの上乗せ効果を検討したPRIME試験2)や,FOLFOXにセツキシマブの上乗せ効果を検討したOPUS試験などの結果3)から,KRAS遺伝子野生型患者に対し,抗EGFR抗体薬は上乗せ効果を認めるが,KRAS遺伝子変異型患者に対してはむしろ予後不良となる傾向にあること(detrimental effect)がわかっている4)
    KRAS遺伝子野生型における切除不能進行・再発大腸癌患者に対する一次治療で,FOLFIRIとセツキシマブ,FOLFIRIとベバシズマブの第3相比較試験(FIRE-3試験),FOLFOXとパニツムマブ,FOLFOXとベバシズマブの第2相比較試験(PEAK試験)の結果,抗EGFR抗体薬を先に使用したほうがよい傾向にあった。しかし,米国癌治療学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)2014で,FOLFOXまたはFOLFIRI(physician’s choice)にセツキシマブとベバシズマブの上乗せ効果を比較し,全生存期間(overall survival:OS)を主要評価項目とした大規模第3相試験(CALGB/SWOG 80405試験)の結果,セツキシマブ先行群とベバシズマブ先行群とで有意差は認められなかった,と報告された。これらの結果から,現在はRAS遺伝子野生型患者に対しては抗VEGF抗体薬,抗EGFR抗体薬のどちらを先に使用してもよい,との意見が多い。

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