ここでは,12歳頃~18歳以下を思春期とする。思春期女子の主訴として,無月経や月経不順等の月経周期異常や月経困難症が多く,これらの疾患について取り扱う。
15歳になっても初経が発来しない場合や,3カ月以上月経が停止する続発性無月経は精査の対象となる。思春期女子においても,性交経験があれば成年女性同様,妊娠も念頭に置く。
月経困難症では,鎮痛薬で疼痛のコントロールが不良な場合は,低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin:LEP)製剤の投与を考慮する。
思春期女子が婦人科を受診した際,初交前であっても視診や直腸診を含む婦人科の診察や経腹または経直腸超音波検査,MRIなどの画像診断を行うことは,性器の分化異常等の早期発見の意味でも重要となる。その際,本人に検査の必要性を十分に説明し,承諾後診察を行う。
思春期女子では,無月経や月経不順等の月経周期異常を主訴に受診するケースが多いが,初経発来後数年は視床下部・下垂体・卵巣系の調節機構が未熟なため無排卵周期であるケースが多く,月経周期異常が必ずしも異常でない。このような生理的な月経周期異常の場合は,排卵誘発の治療を積極的に行う必要はなく,2~3カ月に1回ホルモン製剤を用いた月経誘導を行う1)。この際,第一度無月経にはプロゲスチン療法を,第二度無月経では,エストロゲンとプロゲステロンの分泌がきわめて低く,投与終了後の視床下部・下垂体・卵巣系の内分泌動態の正常化を期待する目的でエストロゲン・プロゲスチン療法を行う1)。
月経周期異常のうち体重減少性無月経の場合は,体重の回復を指導するが,摂食障害が疑われる場合は,精神科や心療内科などの専門医へ紹介が必要となる。単純体重減少性無月経でも,標準体重の70%以下の体重減少がある,あるいは著しい体重減少があり,かつ体重の減少傾向が続いている場合は,ホルモン療法による月経誘導を行ってはならず,標準体重の90%を目標に体重の回復をめざすことを優先する1)。
スポーツに熱心に参加する女子が無月経や月経不順で受診した場合,運動によるエネルギー消費量に対し,食事から摂るエネルギー摂取量が少ない利用可能エネルギー不足(low energy availability:LEA)が無月経の原因になっていることが多い。LEAが無月経の原因の場合,ホルモン療法が第一選択の治療ではなく,まずは1日300~600kcalを目安にエネルギー摂取量を増やし,LEAの改善を図る。思春期女子における長期の無月経は,低エストロゲン状態による低骨量の原因となるため,骨密度の検査を考慮する。
これまで,思春期女子における月経痛の多くが機能性月経困難症と考えられてきたが,近年,月経痛を認める思春期女子における,腹膜病変を中心とした子宮内膜症の合併が多く報告されている。また,月経困難症を認める女性では将来の子宮内膜症の発症リスクのオッズ比(odds ratio:OR)が約2.6倍であることからも,疼痛に対する治療のみならず,将来の妊孕性を考慮し子宮内膜症を進行させない,という視点も重要である。非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)またはLEP製剤が推奨されているが,NSAIDsで対応する場合,疼痛コントロールが不良な場合や投与量が増えている場合は,LEP製剤の使用を考慮する。思春期女子に対するLEP製剤の投与について,エストロゲンによる骨端線の早期閉鎖などの問題が懸念されるが,国際家族計画連盟では,初経後3カ月を経過していれば経口避妊薬(oral contraceptive:OC)は安全に使用できることが明らかにされており,また,「OC・LEPガイドライン」2)でも骨成長への影響を考慮する必要はあるが,初経発来後から服用開始可能であることが記載されている。
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