GLP-1アナログとSGLT2阻害薬はいずれも、2型糖尿病例においてプラセボを上回る心血管系(CV)イベント抑制作用が、ランダム化試験(RCT)で認められている。では、これら2剤のCVイベント抑制作用を比較したらどうなるだろう。もちろん、直接比較を行ったRCTはない。そこで本年のADAでは、米国保険データを用いた傾向スコアマッチ比較が12日、Insiya Poonawalla氏(Humana Healthcare Research社、米国)により報告された。本報告に限らず、本年のADAにおける血糖低下薬関連の口頭発表は、何らかのイベントやQOLなど、臨床転帰との関連を検討した結果が目立っている。
Poonawalla氏が解析したのは、同社が構築した公・私的医療保険加入者1300万名のデータベースで、2015年から17年に、GLP-1アナログかSGLT2阻害薬のいずれかを新たに開始し、1年間以上服用していた1万2945例中、傾向スコアでマッチさせた1万1014例である。平均年齢は65歳、60%強がアテローム性動脈硬化疾患(ASCVD)1次予防例だった。またGLP-1アナログは、6割弱が1日1回使用型だった。
その結果、「心筋梗塞」発症率は両剤とも8.1%、「脳卒中」も、GLP-1アナログ群で16.1%となり、SGLT2阻害薬群の15.6%と有意差はなかった(観察期間非提示)。死亡も同様だった(5.2% vs. 4.8%)。ただし、「心不全」はGLP-1アナログ群の18.8%に対し、SGLT2阻害薬群では16.3%の有意低値となっていた(P<0.001)。
一方、本研究の1次評価項目として設定された「心筋梗塞・脳卒中・全死亡」、2次評価項目である「心不全・全死亡」の発生リスクを、ASCVD既往の有無で分けて比較してみたところ、いずれも両群間に有意なリスクの差は認められなかった。
なお、治療中断リスクは、GLP-1アナログで有意に高くなっていた(ハザード比:1.15、95%信頼区間:1.10-1.21)。