膠原病(自己免疫疾患)は女性が罹病しやすいが,近年開発された種々の生物学的製剤により寛解導入率が高まり,従来は妊娠を諦めていた女性が妊娠可能となった。このため,妊娠する前のプレコンセプションカウンセリング/ケアが重要になってきた。妊娠可能な女性に対して,家族計画を話し合い,妊娠に適した状態(寛解状態)になるまで効果的な避妊法を用い,妊孕能を評価し,1年間妊娠しなければ不妊治療を行う。その他,子宮頸癌スクリーニング,栄養指導等を施行することが推奨されている。
個々の膠原病の診断基準に従い診断する。まずは妊娠中に使用可能な薬剤で寛解状態が維持されていることが,妊娠容認基準である。妊娠中の疾患活動性の増悪や妊娠合併症について内科医,皮膚科医,整形外科医等と産婦人科医が連携し,双方の立場から情報提供を行う。
胎児への催奇形性,流産率の増加があるリウマトレックスⓇカプセル(メトトレキサート),セルセプトⓇカプセル(ミコフェノール酸モフェチル),催奇形性のリスクが高まるアラバⓇ錠(レフルノミド),ブレディニンⓇ錠(ミゾリビン),エンドキサンⓇ錠(シクロホスファミド水和物),JAK阻害薬〔リンヴォックⓇ錠(ウパダシチニブ水和物),ゼルヤンツⓇ錠(トファシチニブクエン酸塩),オルミエントⓇ錠(バリシチニブ),スマイラフⓇ錠(ペフィシチニブ臭化水素酸塩),ジセレカⓇ錠(フィルゴチニブマレイン酸塩)〕を寛解後は中止し,妊娠中に使用可能な薬剤へ切り換える。胎児腎障害を引き起こす降圧薬のARB,ACE阻害薬を中止し,他の降圧薬(α-メチルドパ水和物,ヒドララジン塩酸塩,ラベタロール塩酸塩,ニフェジピン,アムロジピンベシル塩酸)へ切り換える。
これらの薬剤を寛解導入を目的として使用する際は,避妊法として低用量経口避妊薬を処方することが望ましい。なお,抗リン脂質抗体陽性例では低用量経口避妊薬は禁忌であるため,子宮内避妊用具(IUD)の装着を考慮する。メトトレキサート投与量が8mg/週を超える場合は,葉酸補充としてフォリアミンⓇ(葉酸)を投与する(処方例:フォリアミンⓇ5mgをメトトレキサート投薬翌日か翌々日に内服)。
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