非侵襲的陽圧換気(NPPV)療法とは,気管挿管などによる気道確保を行わず,鼻あるいは顔マスクにより換気補助療法を行うことである
COPDの増悪に対するNPPVは,挿管を回避し,生存率を有意に改善することが示されている
間質性肺炎の急性増悪に対するNPPVは,現時点で根拠は不十分であるが,十分なインフォームドコンセントのもと導入してよいとされている
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)や,間質性肺炎など慢性不可逆性の呼吸器疾患による慢性呼吸器疾患患者は,時に呼吸器感染症,過労などの右心負荷,続発性気胸,睡眠薬,不適切なO2吸入,原疾患の急性進展などにより,呼吸困難,意識レベルの低下などを中心とした急激な症状の悪化をきたす状態に陥る。この状態を「増悪」あるいは「急性増悪」と言い,致死的状態をきたしうる重要な病態である。
急性増悪の呼吸状態を端的に表現するならば,“努力性の頻呼吸”である。これは,併存する慢性呼吸器疾患のため,低い1回換気量による有効肺胞換気量の低下を補うために頻呼吸になっている状態である。換気効率はきわめて悪く,この状態を改善するには,呼気終末陽圧(positive endexpiratory pressure:PEEP)による気道や肺胞の開存と,pressure support(PS)による換気補助療法により換気効率を高めることが必要となる。
本稿では,慢性呼吸器疾患急性増悪に対する換気補助療法について,非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)療法に焦点を絞り解説する。
NPPVとは,気管挿管などによる気道確保を行わず,鼻あるいは顔マスクにより換気補助療法を行うことであり,急性呼吸不全のみならず慢性呼吸不全にも応用可能であるが,本稿では慢性呼吸器疾患の急性増悪にポイントを絞る。
NPPVには,①気管挿管に伴う合併症を避けられる,②食事が可能,③着脱が容易,などの利点がある一方,①気道と食道が分離できない,②高い気道内圧がかけられない,③患者の協力が必要,④マスクの顔面圧迫による発赤・潰瘍形成,などの欠点がある。
慢性呼吸器疾患急性増悪に対するNPPVの適応注意や禁忌を表1,効果とリスクについての概略を図1に示す。医師のみならずコメディカルスタッフは,NPPVの適応,有効性,限界を理解した上で施行することが重要である1)。
NPPVは従来型の人工呼吸器を使用してもある程度行えるが,高性能で不快感の少ない専用の人工呼吸器とマスクの使用が望ましい。NPPVは,ただ患者に装着するだけではうまくいかない。また,NPPVの必要性と内容を患者に十分説明し協力を得ることも重要である。
以下では慢性呼吸器疾患の急性増悪の代表的疾患であるCOPDの増悪と間質性肺炎の急性増悪におけるNPPVの意義につき概説する。
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