十二指腸腺腫は十二指腸に発生する上皮性腫瘍性病変である。良性疾患ではあるが,臨床上はがん化をきたす可能性があるため,内視鏡での切除が望まれる。家族性大腸腺腫症でも十二指腸に腺腫が高率に発生し,がん化した際には予後に強く関わることが知られており,十二指腸の定期的なサーベイランスが重要であることが知られている。
上部消化管内視鏡検査で発見されることが多いが,その発見頻度は他の消化管腫瘍に比較するときわめて低い。十二指腸は解剖学的には小腸の一部で,球部,下行部,水平部,上行部に分類され,下行部から水平部の背側は後腹膜に位置するため漿膜は存在せず,Cの字状に膵臓を囲むように存在する。トライツ靱帯より肛門側から空腸に移行するが,内視鏡的にその正確な境界を同定することは不可能であり,通常,上部消化管内視鏡検査で同部位まで観察することは容易ではない。下行部には乳頭が存在し,胆汁と膵液の出口に相当する。内腔は絨毛組織で覆われており,小腸の一部でもあるのでKerckring襞が存在する。胃癌の対策型検診を導入する自治体の増加,および任意型検診でも内視鏡を導入する施設が増加しており,今後偶発的に発見される機会が増加することが見込まれ,実際に治療する機会は増加している。しかし,その自然史も明らかになっておらず,がん化した際の取り扱いなども不明な点が多い。何より現段階では「取扱い規約」や「治療・診断ガイドライン」は存在しない。
十二指腸病変を疑った場合には,病変と周囲の絨毛との境界が明瞭か明瞭でないかで上皮性腫瘍かどうかを判断する。上皮性腫瘍と判断したときはインジゴカルミンを散布するとさらに腫瘍境界が明瞭になる。形態としては扁平・隆起型が70~80%と多く,純粋な陥凹型は少ない。典型的な腺腫を疑う所見としては病変の白色化が挙げられる。吸収上皮細胞内の脂肪やリンパ流の停滞を反映していると考えられ,白色光観察ではmilk-white mucosa,NBIやBLIなどの画像強調内視鏡で明瞭に視覚化されるときにはwhite opaque substance(WOS)と表現される。また,水平部から肛門側にみられる腺腫は,腸型の粘液形質を示し,このような白色変化が出ることが多いとされる。一方で,球部から下行部の発赤調の腫瘍は,胃型の粘液形質であることが多いとされる。腫瘍サイズと色調とを組み合わせた場合には,10mm以下の白色調病変は低異型度の腺腫の可能性が高く,10mm以上の発赤調の腺腫は高異型度の腺腫の可能性が高く,がん化に注意する。
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