【他の抗うつ薬と同様に,閉経後女性のホットフラッシュを改善する】
ホットフラッシュ(HF)は,閉経期にエストロゲンが大きく揺らぎながら低下する際に起こる代表的な血管運動神経症状である。60歳未満または閉経後10年未満の女性に対して行われるホルモン補充療法(HRT)は,ベネフィットがリスクを上回ることが確実であるが,それ以上の女性に対してはHRT以外の治療法が求められる。これまでSSRIやSNRIなどの抗うつ薬およびガバペンチンのHFに対する有効性が確認されてきたが,ミルタザピンも同様に有効である可能性が,動物実験および小規模なヒト試験で示されている。
ラセミ体であるミルタザピンのS体であるesmirtazapineは,5-HT2A受容体に対する選択性が高く,ミルタザピンよりも効果が高いことが期待される。本論文では,940名以上の女性に対する12週間のランダム化比較試験2件の結果を併せて報告している1)。いずれの試験においても,参加者は中等度以上のHFを頻回に自覚する40~65歳の閉経後女性で,プラセボまたは2.25mg/4.5mg/9mg/18mgのいずれかの用量のesmirtazapineに無作為に割り付けられた。結果として,4.5mg以上のesmirtazapineに割り当てられた群においては,4週間後および12週間後のHFの回数がプラセボ群に比較して有意に少なかった。閉経後女性のHFに対しては,SSRI,SNRI,ガバペンチンに加えて,今後はesmirtazapineが選択肢のひとつとなることが予想される。
【文献】
1) Birkhaeuser M, et al:Climacteric. 2019;22(3): 312-22.
【解説】
寺内公一 東京医科歯科大学女性健康医学教授