降圧薬やスタチンなど、心血管系(CV)保護作用の示されている薬剤の合剤(ポリピル)による、CVイベント抑制作用が示唆されるようになって久しい。今回のAHAでは、それを実証すべく実施されたランダム化試験(RCT)“TIPS-3”が報告され、若干、意外な結果となった。Prem Pais氏(セント・ジョーンズ研究所、インド)が報告した。
TIPS-3の対象となったのは、男性50歳以上、女性60歳以上で、CV疾患発症リスクが年間1.0%超と見積もられた、血管系疾患既往のない5713例である。うち48%がインドで登録され、登録が次いで多かったのはフィリピン(29%)、コロンビア(9%)の順だった。
平均年齢は64歳、女性が53%を占めていた。84%に高血圧、36%に糖尿病を認め、10年間CV疾患発症リスクは約1.5%だった。
これら5713例は「β遮断薬・ACE阻害薬・ヒドロクロロチアジド・スタチン」配合剤(ポリピル)群とプラセボ群にランダム化され、平均4.6年間観察された。
その結果、血圧は、試験開始時の145mmHgから、ポリピル群でプラセボ群に比べ、観察期間平均で5.8mmHgの低値となったものの、当初予想の9.0mmHgには及ばなかったとPais氏は述べた。LDLコレステロールも同様で、試験開始時の121mg/dLから、ポリピル群ではプラセボ群に比べ、19.0mg/dLの有意低値となったが、これも当初想定していた下げ幅の約半分だったという。
この一因と考えられたのが、服薬アドヒアランスの低さだった。多剤併用に比べアドヒアランス良好が強みのはずだったポリピルだが、2年間で19%が服用を中止、この数字は4年後には32%に上った(プラセボ群も同様)。ただし有害事象による中止は5%のみだった。
その結果、1次評価項目である「CV死亡・脳卒中・心筋梗塞・心不全・蘇生に成功した心停止・動脈血行再建術施行」の、ポリピル群における対プラセボ群ハザード比は0.79(95%信頼区間[CI]:0.63−1.00、P=0.050、4.4% vs. 5.5%)であり、群間に有意差は認められなかった。
同様に、有害事象による試験薬服用中止率も、両群間に有意差はなかった。
本試験はWellcome Trustほかからの資金提供を受けて実施された。また報告と同時に、NEJM誌にオンライン掲載された。