子宮肉腫は,軟部肉腫のうち子宮を原発とするもので,子宮体部悪性腫瘍全体の4~9%を占める。平滑筋肉腫,内膜間質肉腫などの組織型があり,5年生存率が50%以下の予後の悪い子宮腫瘍である。
診断は手術による摘出子宮検体によって行われるのが基本であり,術前の組織診断は困難である。画像診断も容易ではなく,術後の組織診断においても良性と判断され,再発を機に再診断により確定することもある,診断が難しい腫瘍である。
治療の原則は,外科的切除である。基本術式は,子宮全摘出および両側付属器摘出術であるが,術前の診断が難しいことからも,子宮筋腫核出術後や子宮全摘出術で診断に至る例も多い。不十分な摘出となった場合は,基本術式の再施行を考慮する。子宮全摘出術のみで付属器摘出がなされずに子宮肉腫の診断に至った場合,特に低異型度子宮内膜間質肉腫等のエストロゲン受容体陽性の腫瘍においては,付属器摘出術の追加を考慮するが,低異型度の場合は付属器摘出術の有無での予後に差がないというデータもあり,卵巣温存について検討がされている。低異型度子宮内膜間質肉腫においては,早期症例では術後経過観察,進行症例においては,MPA(メドロキシプロゲステロン酢酸エステル)やGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)アナログ製剤,アロマターゼ阻害薬等の有用性の報告があるが,ホルモン受容体発現の有無や卵巣摘出の有無,適応外使用など留意して選択する必要がある。子宮平滑筋肉腫や高異型度子宮内膜間質肉腫,未分化子宮肉腫などの悪性度の高い肉腫においては,手術による完全摘出が最大目標になり,術後補助療法については議論がある。
Ⅰ期の場合,子宮肉腫の組織型にかかわらず,術後補助化学療法の意義は明らかではない。ただし,子宮平滑筋肉腫を含んだ検討においては,Ⅰ,Ⅱ期の早期例において,経過観察に比べ術後ドキソルビシン単剤療法により全生存期間は改善しなかったが,無再発期間の延長が示され,検討の余地がある 。
進行子宮肉腫例においては,全身化学療法としてドキソルビシン単剤療法が推奨される。子宮肉腫を含む進行軟部肉腫症例において,ドキソルビシンにイホスファミドを追加すると,奏効率は14%から26%に上昇するとの報告もあるが副作用も非常に強く,治療完遂は難しいとされる。第2相試験において有用性が期待されたゲムシタビン+ドセタキセル併用療法も,第3相試験でのドキソルビシン単剤との比較で効果は遜色なかったが,QOLの観点でドキソルビシン単剤が,ファーストラインの標準治療となっている1)。放射線療法は術後補助等において有用性は示されていない。
子宮肉腫再発例においては,切除可能病変であれば,摘出が考慮される。切除が困難である場合は,全身化学療法が選択となり,セカンドラインの化学療法として,ゲムシタビン+ドセタキセル併用,ゲムシタビン,ダカルバジン,イホスファミドなどがあり,分子標的治療薬としてパゾパニブ,トラベクテジン,エリブリンも承認されている。
分子標的治療薬は,アントラサイクリンの前治療後の臨床試験として検討され,マルチチロシンキナーゼ阻害薬であるパゾパニブは,子宮平滑筋肉腫を含む転移性軟部肉腫に対して使用され,プラセボに対して無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の延長が示された(4.6カ月 vs. 1.6カ月)2)。トラベクテジンは子宮平滑筋肉腫を含む試験で,ダカルバジン単剤に比べPFSの延長を示し(4.2カ月 vs. 1.5カ月),日本人を対象とした試験においても,best supportive careに比べ,PFSの延長を示している(5.6カ月 vs. 0.9カ月)3)。エリブリンは平滑筋肉腫,脂肪肉腫を含む進行・再発軟部肉腫症例で検討され,ダカルバジン単剤に比べPFSは延長しなかったが,全生存期間の有意な延長が示された(13.5カ月 vs. 11.5カ月)4)。
これらの分子標的治療薬間の有用性の比較検討はないため,臨床試験での対象疾患を参考に薬剤選択が考慮される。放射線治療による予後延長は示されておらず,緩和照射として考慮される。また,低異型度子宮内膜間質肉腫と同様に,ホルモン受容体陽性の肉腫においてはホルモン療法が考慮される。
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