(岐阜県 K)
結論を先に申し上げますと,子宮頸癌の検診としての細胞診の自己採取は,各関連学会の見解や専門団体の様々な見解より,わが国では推奨できません。
まず子宮頸部細胞診による子宮頸癌の検診は,組織化された精度管理のもとで行われ,わが国を含む多くの先進国で子宮頸癌の死亡率を劇的に減少させてきました1)。現在,欧米先進各国やオーストラリアなどは子宮頸癌やその前がん病変である高度の子宮頸部上皮内病変(高度異形成・上皮内癌)の疾患登録や未受診者対策を含めた高い精度の組織化された子宮頸癌の検診を国民に提供し,60~80%以上の高い受診率を保っています。
しかし,わが国は国民生活基礎調査によるアンケート調査で,20~69歳の子宮頸癌の検診受診率は40%と低迷していることに加え,検診提供体制や精度管理にも多くの問題点が指摘されています。その結果として,検診受診率が特に低い50歳未満の若年女性の子宮頸癌による死亡率が増加傾向にあります2)。
現在,厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年2月4日一部改正)」において,子宮頸癌の検診項目は,「問診,視診,子宮頸部の細胞診及び内診とし,必要に応じてコルポスコープ検査を行う」とされ,子宮頸部の細胞診については,「子宮頸管及び腟部表面の全面擦過法によって検体を採取し(以下省略)」との記載があります。この根拠は,子宮頸部上皮内病変のスクリーニングでは,ハイリスクのヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)の持続感染を契機に子宮頸部上皮内病変が発生してくる扁平上皮領域と頸管腺の移行部(いわゆる生理的びらん部位)より細胞を採取することが重要ですが,しばしばこの領域が頸管内にある女性(特に閉経後など)もいるからです。
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