エイズ,結核,マラリアの世界三大感染症には,世界保健機関(World Health Organization:WHO)やGlobal Fundが中心となって大規模な制圧戦略が進んでいる。一方,WHOは「顧みられない熱帯病(neglected tropical diseases:NTDs)」として20疾患群を指定し,それぞれの流行地域で疾病の丁寧な根絶計画を展開しているが,貧困により遠隔地域における成果は上がっていない。それどころか,NTDsのうちデング熱において,2014年に東京を中心に約60年ぶりの突発性流行が起こった。
いよいよ2020年の東京オリンピック開幕まで1年を切った。引き続くパラリンピック開催と併せ,わが国へのインバウンドの旅行者は年間4000万人と予想されている。overtourismに「観光公害」というショッキングな訳がつき出しているが,その中の懸念事項として,外国から様々な病原体が運ばれ,わが国に“introduce”される可能性がある。
本特集では,わが国で特に感染拡大が心配される熱帯病を,寄生虫・ウイルス・細菌感染症にわけて,それぞれのエキスパートに解説頂いた。
1 寄生虫:マラリア 狩野繁之
2 寄生虫:トリパノソーマ症・リーシュマニア症 平山謙二
3 ウイルス:デング熱 森田公一
4 ウイルス:ジカウイルス感染症 忽那賢志
5 ウイルス:黄熱 氏家無限
6 ウイルス:MERS 馳 亮太
7 ウイルス:ウイルス性出血熱 加藤康幸
8 細菌:細菌性下痢症(コレラ・赤痢) 濱端 崇
9 細菌:ハンセン病 四津里英