わが国においては高齢化の進展とともに,認知機能障害の発症が大きな問題となっている。この認知機能障害を発症させる疾患にはアルツハイマー型認知症,血管性認知症,混合型など多くの種類があり,その発症メカニズムの全容はいまだ明らかではない。
一方,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD),循環器疾患(特に心房細動,心不全,心筋梗塞),血管障害では,脳−心−腎が連関して血管性認知障害が発症することは容易に推測できる。
しかし,このようなvascular hypothesis以外にCKDや心房細動等においては血管性認知症ばかりでなく,アルツハイマー型認知症の増加も報告されており,このメカニズムとして脳内のアミロイド蛋白の排泄異常もしくは産生亢進(amyloid hypothesis)が提唱されているが,一定のコンセンサスは得られていない。
そこで今回,「脳−心−腎連関」と「認知症」の関連について脳・心・腎分野のエキスパートに論述頂き,認知症に詳しい精神科医(精神保健指定医)にも助言を頂いた。
1 脳の立場から
内藤裕之(広島大学大学院脳神経内科学)
細見直永(広島大学大学院脳神経内科学准教授)
2 腎臓の立場から
三島英換(東北大学病院腎高血圧内分泌科)
清元秀泰(東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門教授)
3 心臓の立場から
藤本 源(奈良県西和医療センター循環器内科医長)
土肥直文(奈良県西和医療センター副院長/循環器内科部長)