開業して20年余,いまだに,長引く咳をクリアカットに診断するのは難しい,と感じている。それはまるで,アルプスに連なる山々のようで,おぼろげな霧の彼方に霞む山頂=咳の正体に,何の準備もなく到達するのは至難の業であり,道に迷い遭難し,患者を路頭に迷わせること,必至である。山に登るには優秀な山岳ガイドが必要である。今回,臨床家として尊敬し,その診断力を麓から憧れながら仰ぎ見る皆様にお力を借り,読者諸氏のガイドをして頂くこととした。できあがった原稿を拝読し,長引く咳という難攻不落の山に挑むに最適の登山地図ができたと確信している。明日からこれを手に,日々の診察にあたって頂きたいと願う次第である。
1病歴・身体診察から診る長引く咳
平島 修(徳洲会奄美ブロック総合診療研修センター長)
2画像検査・呼吸機能検査で慢性咳嗽を診断する
長尾大志(滋賀医科大学医学部附属病院呼吸器内科講師/教育医長)
3「長引く咳」を診断するためのエビデンス
上田剛士(洛和会丸太町病院救急総合診療科部長)
4悩ましき咳 マイコプラズマ・百日咳の診断
忽那賢志(国立国際医療研究センター病院国際感染症センター国際感染症対策室医長)
5長引く咳の診断戦略
志水太郎(獨協医科大学病院総合診療科部長)