膵癌は全悪性腫瘍の中で最も治療成績が不良な“最凶”の癌と称される。たとえ切除が行われても,5年生存率は18.8%(日本膵臓学会膵癌登録2001-2007)ときわめて不良である。治療成績向上のため多くの先達たちは,膵全摘術,拡大郭清手術,他臓器合併切除,脈管合併切除,術中放射線照射療法などを試みたが,残念ながら満足すべき成績は得られなかった。最近の膵癌に対する化学療法・放射線治療機器の進歩は著しく,膵癌治療に一筋の光明が差すようになってきた。これら集学的治療は有効であるが,その一方で治癒のためには外科手術は欠くことができないのも事実である。本特集では,この集学的治療の時代の“切除可能膵癌”の術前・術中・術後のマネジメントを中心に概説する。
1 切除可能膵癌に対する術前治療─術前治療の是非,どのようなメリット・デメリットがあるか
元井冬彦(東北大学大学院消化器外科学准教授)
海野倫明(東北大学大学院消化器外科学教授)
2 切除可能膵癌に対する手術中の留意点
里井壯平(関西医科大学外科学講座胆膵外科教授)
山本智久(関西医科大学外科学講座)
松井陽一(関西医科大学外科学講座准教授)
3 切除可能膵癌に対する術後補助療法とフォローアップ
上坂克彦(静岡県立静岡がんセンター院長代理/肝胆膵外科部長)