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No.5120:今すぐ始める! オンライン診療

登録日:
2022-06-08
最終更新日:
2024-02-14

執筆:吉田 伸(頴田病院一般・地域包括病棟センター長/総合診療科長)

2006年名古屋市立大学医学部卒業。飯塚病院での初期研修後,同院総合診療科を経て現職。日本プライマリ・ケア連合学会理事も務める。日本内科学会総合内科専門医等。

1 オンライン診療の予習をする
オンライン診療のメリットは,①患者負担が軽減されること,②非対面で行えること,③プライベート空間で行えること,の3つ。
・規約について厚生労働省の指針や診療報酬の算定要件を確認する。
・オンライン診療の研修を受け,医師会の認証カードを入手する。
・学会のガイドや診察動画を視聴する。

2 自施設内でのオンライン診療の適応を確認する
【Q1】発熱外来や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性患者に用いる?
⇨ 「はい」の場合は「6 発熱外来やCOVID-19陽性自宅療養者診察への応用」へ
【Q2】平時の診療に用いる?
・初診か再診か。オンライン診療の対象者のリストを見ながら検討。
【Q3】他の診療形態と連結する?
・在宅医療と連結(D to P with N)
・保険外診療と連結(緊急避妊,健診・検診)

3 オンライン診療システムを構築する
【プランA】汎用サービスを用いたシステムを自作
受付 ➡ 患者登録 ➡ 重症度評価 ➡ 診療計画同意 ➡ ビデオ通信機器による診察 ➡ 処方箋発行 ➡ 次回予約 ➡ 会計
【プランB】専門業者による包括的システムを購入

4 プライマリ・ケアにおける5つのポイントを踏まえ診療する
A 医師-患者関係が      構築されている/まだされていない
B オンライン診療支援者が  いる/いない
C 医療機関に登録が     ある/ない
D 診療区分が        初診か/再診か
E 症状           急性症状?/慢性疾患増悪?/重症?

5 診察のコツ
・患者の通信機器や通信状況を確認する。
・患者からオンライン診療を選択するに至った経緯を聞き取る。
・普段の診察を再現してもらう指示の出し方を工夫する。
・背景情報から適切な生活指導を行う。

6 発熱外来やCOVID-19陽性自宅療養者診察への応用
・トリアージによりオンライン診療または対面診療を案内する。
・呼吸状態の視診が大切。
・パルスオキシメーターの装着を指導する。
・適切な療養指導と急変時指示を行う。

7 今後に向けて,オンライン診療の質改善指標を考える
オンライン診療の安全性や有効性についての情報は,個々の医療機関だけで保有するのではなく,今後のオンライン診療の進展に向け社会全体で共有・分析されていくことが望ましい。

1 オンライン診療の予習をする

はじめに,オンライン診療のメリットを3つご紹介する。それは,①患者負担が軽減されること(時間,空間,心理),②非対面で行えること,③プライベート空間で行えること,である1)

患者は通院の時間および経済的な負担がなくなり,白衣高血圧に代表されるような緊張を伴う医療機関ではなく,リラックスできる自分の空間から診療を受けられる。非対面で行われるため,昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの流行時には医師・患者双方に感染リスクを伴わない診療形態として適切である。また,在宅医であればご理解頂けるように,オンライン診療は患者の生活空間で行われるため,患者の人となりを示す物品,居住環境,職業情報,同居家族など,相手の心理社会的背景も含めた情報をスクリーン越しに得ながら,かかりつけ医としての診療を行うことができる。

1.オンライン診療の適切な実施に関する指針の内容

新しい診療を始める際は,医療行為としての法規と,保険診療としての診療報酬算定要件といった2つのルールを確認する必要がある。まず法律的な予習であるが,厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」2)を眺める。この指針は2018年に制定された,いわゆるコロナ禍前の「平時のオンライン診療」を定義したものである。この指針では「オンライン診療」を,
「遠隔医療のうち,医師-患者間において,情報通信機器を通して,患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を,リアルタイムにより行う行為」
と定義し,医師法第20条(無診察治療等の禁止),医療法第1条の2第2項(医療を提供する場所),個人情報保護法との整合性を示している。ただし,これら法律に触れないための「最低限遵守すべき事項」として下記を列挙している。長くなってしまうが,これらはわが国のオンライン診療の根幹とも言える注意事項であるため,指針の内容について解説しておく。

なお,②適用対象,⑤薬剤処方・管理の下線は,2022年1月の改訂指針において,後述する「時限的措置の電話・オンライン診療」との整合性と,その実施結果を踏まえた関係諸機関での議論を踏まえて大幅に加筆された箇所を示している。

(1)オンライン診療の提供に関する事項

①医師-患者関係/患者合意

医師と患者との間でオンライン診療の実施の合意があり,患者がオンライン診療を希望すること,また,診察時に医師の判断により対面診療を案内しうることを明示的に確認すること。

②適用対象

ビデオ通信機器でできる範囲の患者の心身の状態に関する情報をオンライン診療により得ること。オンライン診療実施の可否については,日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」3)などを踏まえて医師が判断し,その場合は対面診療を実施または紹介すること。特に緊急性が高い症状の場合は速やかに対面受診を促すこと。初診からのオンライン診療は原則として「かかりつけの医師」が行うこと。ただし,過去の診療録,診療情報提供書,健康診断結果,地域医療情報ネットワーク,お薬手帳,PHR(Personal Health Record)などから診療開始に十分な医学的情報を得られる場合や,かかりつけ医がいない,もしくは当該かかりつけ医がオンライン診療を実施できない場合は,かかりつけ医以外の医師が実施可能である。しかし,その場合はオンライン診療の実施後に対面診療に適切につなげられるようにしておくこと。他に「かかりつけの医師」以外が実施する例外として,禁煙外来と緊急避妊に係る診療を規定する。

診療前の相談にあたっては,結果としてオンライン診療が行えない可能性や,診療前相談の費用などについて医療機関のホームページなどで示し,患者に十分周知すること。在宅医療や複数の診療科の医師がチームで診療を行う場合は,診療計画に医師名を記載の上,交代でオンライン診療を実施することが可能である。

③診療計画

医師は事前の対面診療により医学的評価を行い,それに基づいてオンライン診療の内容,対面診療や検査との組み合わせ,予約や診療時間,使用する情報通信機器,対面診療に切り替える状況,診察への患者協力,急病急変時の対応指針,チーム診療,セキュリティリスクに関する責任範囲などを明記した「診療計画」を定め,2年間は保存しなくてはならない。

初診からのオンライン診療を行う場合,診察後に次回診察の日時や症状増悪時の対面診療先など,その後の方針を患者に説明する。オンライン診療における映像や音声を保存する場合は,双方の不利益がないように取り決め合意すること。患者の急変時にオンライン診療を行った医師が対応できないことが想定される場合は,対応可能な医療機関に診療情報が提供されるなどの体制を整備しておくこと。

④本人確認

医師が医師免許を保有していることを,医師免許証やHPKI(healthcare public key infrastructure)カード(医師資格証,図1)などで患者が確認できるようにして おくこと。患者の本人確認も,健康保険証(被保険者証),マイナンバーカード,運転免許証などで行うこと。ただし,緊急時のやむをえない場合や,初診を対面でしているなど双方が本人確認をできる状況では毎回本人確認を行う必要はない。

⑤薬剤処方・管理

現にオンライン診療を行っている疾患の延長とされる症状の対応に必要な医薬品については,医師の判断によりオンライン診療による処方を可能とする。ただし,初診や新たな疾患に対して処方を行う場合は,日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」などのガイドラインを参考にすること。なお,初診の場合は,①麻薬および向精神薬,②基礎疾患の情報把握ができていない患者に対する薬剤管理指導料「1」の対象薬剤,③基礎疾患の情報把握ができていない患者に対する8日分以上,の処方は行わないこと。重篤な副作用が発現する恐れのある医薬品の処方は特に慎重に行うとともに,処方後のリスク管理に最大限努めること。

⑥診察方法

医師がオンライン診療を行っている間,患者の状態について十分に必要な情報を得られないと判断した場合は,速やかにオンライン診療を中止し,対面診療を行うこと。

情報の収集にあたっては,リアルタイムの視覚および聴覚の情報を含む情報通信手段を採用すること。補助的な手段として画像や文字などによる情報のやり取りを活用してもよいが,それだけで完結してはならない。

オンライン診療において,医師は同時に複数の患者の診療を行ってはならない。他の医療従事者などが同席する場合は患者に説明を行い,同意を得ること。

(2)オンライン診療の提供体制に関する事項

①医師の所在

オンライン診療を行う医師は医療機関に所属し,それを明らかにすること。患者の急病急変時に備え,直接の対面診療を行える体制を整えておくこと。

騒音で音声が聞き取れない,ネットワークの不安定により動画が途切れるなど,適切な判断を害する場所でオンライン診療を行ってはならない。

診療録など過去の患者の状態を把握できる体制を整えなければならない。第三者に患者情報が伝わることのないよう,医師は外部から隔離される空間においてオンライン診療を行わなければならない。

②患者の所在

対面診療が行われる場合と同程度に清潔かつ安全であること。プライバシーが保たれていること。特定多数人に対してオンライン診療を提供する場合は診療所の届出を行うこと。ただし,巡回診療や健康診断の実施では診療所開設の手続きは要しない。

2.指針におけるオンライン診療の位置づけと電話診療について

上記の項目の後,「患者が看護師等といる場合のオンライン診療(D to P with N)」「患者が医師といる場合のオンライン診療(D to P with D)」と続くが,D to P with Nでも上記の「最低限遵守すべき事項」に沿うこと,D to P with Dでは主たる診療責任は患者に対面している主治医であり,オンライン上の専門医が遠隔手術やセカンドオピニオンを行うという仕組みになっている。

現在,筆者が気になっているのは,(1)⑥の診察方法のところで,「情報通信手段に関しては視覚および聴覚の情報を含む」とある。つまり,ここに時限的措置で定義された電話診療に関する記載はない。そして,2022年2月の診療報酬改定答申書4)では,電話診療の文言はなく,オンライン診療の指針に従うとある。現在,コロナ蔓延期に診療のつなぎとして多用されている電話診療については,今後はたしてなくなってしまうのか,動向を注視する必要がある。

3.オンライン診療の法規改定に関する経緯

さて,オンライン診療の指針はこのようになっており,上記の内容が最新でもあるのだが,ここに至った法規的経緯について追記しておく。

2018年の指針は,平時のオンライン診療に法的な位置づけと医療としての基準を示したものであったが,その後のCOVID-19の感染拡大を受け,厚労省は2020年4月に「時限的措置の電話・オンライン診療」について規定した事務連絡を発出した5)。これにより初診からのオンライン診療が,疾患・病態の枠を撤廃して実施可能となり,さらに電話による診療も認められ,上記指針中の下線部の変更に至った。

このように,わが国のオンライン診療に関する厚労省からの指針や通知は目まぐるしく変わっており,ついていくのが大変である。厚労省の「オンライン診療に関するホームページ」6)には新しい内容が逐次的に盛り込まれるようになっているため,最新の法規確認にはここをあたるとよい。

4.診療報酬改定に関する経緯

(1)COVID-19感染拡大に伴う初診料の引き上げと算定要件の緩和

診療報酬に関しても時系列で状況の整理をしておく。

「平時のオンライン診療」では,患者との事前診療計画同意書へのサイン,再診外来の事前提供実績などを算定要件としていたものの,診療報酬は低めに設定されていた。しかし,COVID-19感染拡大を受けた上記事務連絡5)の時限的措置の発出に合わせ,緊急的に対応する診療報酬の引き上げと算定要件の緩和が行われ,初診は対面診療の74%(214点),再診は医学管理料も含めほぼ同等の点数が電話・オンライン診療に設定された。

これらが混在した状態(実際は時限的措置を算定したケースのほうが圧倒的に多いのだが)でCOVID-19の第6波まで2年間が経過したのち,2022年4月からの診療報酬改定が示された7)。ここでは初診料(情報通信機器を用いた場合)という新たな区分が設けられ,初診料(対面診療)の87%にあたる251点が設定された。これは時限的措置より37点増えている。

(2)情報通信機器を用いた再診料の新設

また,従来の「平時のオンライン診療」に対応する算定項目であったオンライン診療料が廃止され,再診料(情報通信機器を用いた場合)が新設となり,対面の再診療と同等の73点が設定された。再診料と併算定される各種医学管理料に関しては,同じく情報通信機器を用いた場合の評価対象として,対面診療の約87%の点数が設定されている。

ここでのポイントは,平時と時限的措置のオンライン診療料として混在していたものが,初診(対面orオンライン),再診(対面orオンライン)による算定項目として統合されたことと,従来のオンライン診療料の算定要件であった直前6カ月の対面診療実績や,対面診療と次回の対面診療の間隔が3カ月以内であるなど,対面とオンラインの配分に関する規定がなくなったことである。ただし,これが完全な撤廃になっているかは,今後の告示,通知,事務連絡でさらなる確認が必要である。

5.オンライン診療を始めるには

さて,オンライン診療の開始にあたっては,厚労省のオンライン診療研修8)を受講する必要がある。これは上記の法規・診療報酬算定要件がまとめられ,実践者によるケースも盛り込まれている。総講義時間は2時間半程度であり,各章ごとの確認テストにパスする必要があるため,制度理解も深まる。

オンライン診療料を算定するには,その施設基準に係る届出をする必要があるため,詳しくは厚労省より出されている「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」9)を参照頂きたい。

6.診療に有用な資料の紹介

ここまで法規,診療報酬についての解説を行ってきたが,実際の診療にあたり有用な学会資料を紹介する。

日本プライマリ・ケア連合学会は,「プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド」10)を2020年5月よりおよそ年1回のペースで公開している。これはそれまでの外来,在宅,病棟におけるプライマリ・ケアの実践者の目線から,新しいオンライン診療の患者適応や,平時と時限的措置の制度比較などを紹介している。2021年8月に発表されたVersion 2.0では,その間1年の時限的措置による電話・オンライン診療の知見が発熱患者やCOVID-19自宅療養患者に対する診療の章として新たに加筆された。また,オンライン診療やオンライン薬剤指導の実践者たちによる回顧録も掲載している。

もうひとつ,「オンライン診療診断学ことはじめ」11)は,日々オンライン診療を行っている医師と,心理社会背景をもとに演じる模擬患者が,実践さながらのオンライン診療を実演し,各ケースのポイントを診察技法やコミュニケーション,患者経験価値の観点から振り返る動画シリーズである。ここまで「子供の風邪」「おとなの高血圧」「55歳女性 発熱と咳のケース」「30歳男性 コロナ自宅療養者」「30代女性 軽症コロナ患者のケース」と発表しているので,ぜひご覧頂きたい。

以下の章では,主に上記2つのソースを中心にオンライン診療の導入から実践までを解説する。

2 自施設内でのオンライン診療の適応を確認する

この章では,まず特殊なオンライン診療の活用について読者にご確認する。

【Q1】発熱外来やCOVID-19陽性自宅療養者に用いる? ⇨「はい」なら6へ

まず,Q1である。これは,現在のCOVID-19蔓延における特殊事情が多いため,それに沿った特別編として6で解説する。
ここでは,

【Q2】平時の診療に用いる?

の問いに「はい」という読者に対し,オンライン診療の適応について説明する。

(1)平時の診療におけるオンライン診療の適応

さて,読者諸氏は日頃どのような診療形態で医療を提供しておられるだろうか。この診療形態という言葉は耳慣れないかもしれないが,外来,病棟,在宅と言ったら,ああ,と思われるかもしれない。PubMedのMeSHタームで一番確からしい英単語を探してみると,「patient care」となり,この定義としては「医療従事者及びその監督下にある非専門家によって提供されるサービス」とある。下位概念に外来診療や病棟診療があり,同列概念の地域健康サービスの下位概念に在宅医療がある。小難しくなってしまったが,お伝えしたかったのは種々の診療形態そのものが学問的にも体系化されているということである。

疾病,受傷ないしはそれによる慢性化した問題を抱えた患者は,図2のような診療形態をまたいだ受療の旅(patient journey)を続けることになる。図2の吹き出しに診療形態ごとのよくありそうな患者の気持ちを代弁した。

 

さて,皆さんの医療機関は,このうちどの診療形態を取り扱っているだろうか。診療所であれば,「かかりつけ外来」と「在宅医療」かもしれない。病院であれば,「救急外来」に「急性期病棟」と「亜急性期病棟」を持っているかもしれない。そういった場合は,今までも「ケア移行」,つまり,ある患者が1つの診療形態から別の診療形態に(これは自院内部のこともあるし,別の医療機関とのこともあるが)引き継ぎとなるときの様々な課題を経験してきたのではないだろうか。

たとえば,患者にはどういう疾患があり,患者や家族はどのような希望を持っていて,どのような診療形態が適しているか,もしくは合わなかったか,という議論が重ねられてきたのではないだろうか。筆者は,オンライン診療は外来,病棟,在宅に続く,“第4の診療形態”であり,その導入にあたっては,読者の皆さんの医療機関で,このような議論の延長として話し合って頂くのがよいのではとかねがね思っている。この議論が,今後に続く,「うちのオンライン診療が患者に提供できる価値」の醸成につながっていくと思うので,まず総論としてお話しさせて頂いた。

(2)オンライン診療の対象者について

次に各論である。大林が自施設例をもとに整理したオンライン診療の対象者のリスト12)に,筆者が直近の提言や診療報酬改定の内容を盛り込んだのが図3 3)7)12)である。左上から順に解説する。

 

①外来初診

まずは,初診か再診かという話である。先に述べたように,時限的措置のオンライン診療では初診が認められたが,その条件のひとつに実施した診療内容を都道府県に対して毎月届け出ることが求められており,それをもとに厚労省が初診オンラインの実施状況を公表している13)。それによれば,小児,成人,高齢者の全年齢層において,発熱,上気道炎,気管支炎,咽頭炎,咳,感冒,鼻汁など,これは症候と病名が混ざってしまってはいるものの,いわゆる「風邪症状」が全体の6~7割を占めている。したがって,少なくとも2022年春時点で,わが国で一般外来のオンライン初診を始める際は,まずは風邪のオンライン診療に習熟する必要がある。COVID-19のオンライン診療も共通点が多いため,詳しくは6で解説する。

他の初診というのは,我々が学会活動の中で検討したものとして,花粉症の処方,カメラで診断可能で症状の軽い皮膚炎,外傷は基本的には診察を要するので適応しないが,明らかに歩ける捻挫・打撲など内部臓器や神経損傷および骨折のなさそうなものなどに限定される。これらの詳細に関しては,2021年春に日本医学会連合から発表された「オンライン診療の初診に関する提言」3)を一読されたい。これは診療科ごとに,オンライン診療の初診に適さない状況およびオンライン診療の初診での十分な検討が必要な薬剤をネガティブリストとして掲載しているので,何をしてよいかというよりも,何を控えねばならないか,がよくわかる提言である(図4)。

②外来再診

次に再診である。諸外国でもCOVID-19の拡大を受け,高血圧を筆頭に,糖尿病,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD),慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),心不全などの慢性疾患を対象にオンライン診療と自宅での疾患モニタリングの必要性が各国の保健省より指摘されており,一部実用化されているが,実施には国や地域によりかなりのばらつきがある14)

わが国では2022年の診療報酬改定上,再診のオンライン診療については特に疾患の指定はなく,従前の特定疾患療養管理料なども対面の87%水準で算定できる。ここは患者の利便性が大きく向上しうるところである。

③禁煙外来

禁煙外来は,2020年の診療報酬改定時点から全5回のうち2~4回目のニコチン依存症管理料について情報通信機器を用いて診察を行う,つまりオンラインで行うことが認められていた。禁煙外来の対象者には働き盛りの患者も多く,通院アドヒアランスの向上につながりうる。このニコチン依存症管理料については,2022年4月の診療報酬改定後も,(2)情報通信機器を用いた場合(155点)として点数設定がなされている。

④医療アクセス

対面診療と併用してオンライン診療の実施が可能となるため,育児や介護中の人であれば自宅から,プライバシーに配慮して個室が確保できれば,職場からもオンライン診療を実施することで,通院の負担を軽減するだけでなく,画面背景にその患者の生活背景を映し出しながら慢性疾患の生活指導を実施できる。

先述の「オンライン診療診断学ことはじめ」11)では,工事現場監督の男性が出張先の現場よりかかり慣れた地元主治医のオンライン診療を依頼するケースも取り上げたが,出張や帰省時にも受診が途切れないこともメリットである。ただしその場合,病状に不安定さがあればしっかり現地の対面診療先を案内することが大切である。この医療アクセスについては図3の右上にまとめたが,離島・過疎地といった地理的に医療アクセスが悪い地域の住民や,がん,心不全,脳梗塞といった持病の管理と就業を両立させたい患者にも福音であろう。今後はこういったオンライン診療を希望しているかかりつけの患者に対し,対面診療でしかできないこと,たとえば生身で行うべき面談,触れて行う診察,各種検査などと,オンライン診療でもできることをわけていき,両者を織り交ぜていくスタイルを患者とともに確立させていくことが求められる。

⑤専門医との連携(D to P with D)

図3左下の専門医との連携コーナーは,D to P with D とある。これは「オンライン診療の適切な実施に関する指針」2)でしっかり定義されており,日頃から直接診療を行っている主治医が診療の責任主体となった上で,遠隔地にいる専門医の知見や技術を活用することができるという診療である。患者にとっては普段のかかりつけ医により対面診察を受けながら,情報通信機器を用いてその場で専門医の診察を受けられるという,安心感を得られる診察スタイルである。

2022年の診療報酬改定では,従前より用意されていた遠隔連携診療料に,診断を目的とする場合(750点),その他の場合(500点)と,新たな区分が設けられた7)。この診断とは,てんかんまたは指定難病の疑いがあるものとされ,それぞれてんかん診療拠点機関または難病診療連携拠点病院の医師が行う必要がある。ここでの留意点は,主治医はあらかじめ専門医に十分な情報提供を行っておく必要があることと,診療報酬は主治医の医療機関でいったん請求し,その後専門医の医療機関に分配する形をとるため,報酬分配と通信障害などのトラブル発生時の責任分担についても事前に協議しておくことである。

肝炎治療や透析前指導,移植後患者指導,緩和ケアなどについては,これに関連する医学管理料が2022年診療報酬改定より新設されているため今後の話題として挙げておいたが,ここではD to P with Dの体裁ではなく,これら特定のケアを専門医療機関や専門チームが直接提供している場合,オンライン診療でも加算ができるという趣旨で追加されているので注意が必要である。

精神科疾患のオンライン診療ならびに医療機関連携についてはわかっていないことが多い。国内外の臨床研究の結果より,主にうつ病,強迫性障害,認知症のスコアリングシステムを用いた診断,ならびにうつ病,双極性障害,統合失調症の服薬アドヒアランス,さらにうつ病,全般性不安障害,パニック障害,社会不安障害,不眠症の治療に関して,オンライン診療は対面診療と比較して同等または一部に有効性が示されており,費用対効果も向上することが報告されている15)。そして,COVID-19の拡大後は,諸外国で精神科外来の多くが遠隔診療に切り替わったという地域や医療機関の報告も寄せられている。

一方で,低所得者層では情報通信機器を購入できない,高齢者がそれらを使いこなせないという,ICT(information and communication technology)を利用できる者とできない者との格差,いわゆるデジタル・ディバイドと呼ばれる課題が各国から報告されており14)15),精神疾患を抱え失業した若年者や,わが国に多い高齢患者のオンライン診療では無視できない課題となっている。しかし,精神科疾患のオンライン診療についてこれだけ知見の蓄積がなされておきながら,2022年の診療報酬改定では,オンライン再診の精神科疾患全般の医学管理料の算定ができないと明記されている。この結果の背景議論について,また,精神科専門医が外来診療を行う上で重要な加算である通院・在宅精神療法のオンライン診療での取り扱いについて,筆者も情報収集を始めたところである。精神科の諸兄にも今後教えを乞うていきたい。

⑥医学管理料の算定除外項目について

順番が入れ替わるが,図3右下に囲んだように,再診の医学管理料に関してはいくつかの評価除外項目がある。精神疾患は触れてしまったので,他に入院中の患者,救急医療,検査が必要な管理,そして指針で実施不可とされるものがこれにあたる。考えてみれば当然なようでもあるが,覚えておいてほしい。

⑦在宅医療を受けている患者(D to P with N)

【Q3】他の診療形態と連結する? ⇨「はい」の場合

・在宅医療と連結(D to P with N)
・保険外診療と連結(緊急避妊,健診・検診)

最後に図3右中下段であるが,まずは在宅医療についての適応である。筆者はD to P with N を最大限活用するとよいと考えている。これは厚労省の指針2)の中でも取り上げられており,患者の同意のもとに患者の側にいる看護師に対して,予測された範囲内での診療補助行為,つまりバイタルサインも含めた診察所見を伝えてもらうほかに,オンラインでは情報通信機器のセッティングもお願いでき有用と思う。また,予測されていない新たな症状が生じた場合には,医師が追加検査を看護師に指示することは可能と明記されており,採血や心電図などを遠隔で指示し,結果を見て往診するなどの対応も可能となる。

今日,在宅医療を提供する診療所数は横ばいとなり,病院のみ漸増しているという傾向がある。その要因として,在宅医の不足により24時間体制の維持ができないことが指摘されている。筆者の施設も在宅医療を提供している小病院であるが,昼間の往診依頼は予約の患者と被ってしまい,夜の往診は逆方向の遠方患者から同時に呼ばれると困ってしまう。そのような場合,オンライン診療にまずつなぎ,画面で患者の顔や呼吸状態,家族の切迫感を見ながら直接往診の判断をするのはいかがだろうか。軽症であればその場で説明を,処方希望であればそのまま出すこともできる。重症ならば,「今,顔出しした,私が行きますよ」と宣言すれば患者にも好印象である。接続には事前に地元の訪問看護師にも協力してもらい,D to P with N体制を構築しておくことが必要である。

2022年診療報酬改定では,従前の時限的措置による在宅時(施設入居時等)医学総合管理料で規定された月1~2回の訪問の一部をオンライン診療に置き換えて実施するオンライン在宅管理料が廃止され,在宅時(施設入居時等)医学総合管理料(情報通信機器を用いた診療を行っている場合)の点数が,フルの訪問を行った場合の5~7割程度で設定された。もともと在宅医療の大きな価値は「医療従事者が会いに来てくれる」ところでもあり,この診療報酬改定も踏まえて,在宅患者に対するオンライン診療は,使いどころを施設内や個々の患者家族と一緒に考えておく必要がある。

(3)自費診療

自費診療に関してであるが,厚労省が定めたオンライン診療研修8)では,緊急避妊薬のオンライン診療による処方に関して,別立ての受講が可能である。これは緊急避妊薬の効果や,1錠のみの院外処方という初診制限はもちろん,非常に重要な点として性犯罪・性暴力のケースを疑った場合は,女性の健康に関する相談窓口などに案内することが強調されているので注意されたい。

(4)健康診断

本章の最後に,健康診断との連結についても述べておく。いろいろな議論も噴出しているマイナンバーカードであるが,これを健康保険証として利用可能にした場合,2020年以降の特定健診結果が,2021年10月以降よりマイナポータルで閲覧できるようになっている。まだ健診データと医療データの結合の実現には壁が多いことと思うが,提供者レベルで言えば,健診や人間ドックの結果説明をオンラインコンサルティングとして実施している医療機関も出てきた。こういった予防医療を受ける対象者には忙しい人が多く,非対面で自分の生活範囲から結果報告と指導をかかりつけの医師より同時に受けられるメリットはありそうだ。

3 オンライン診療システムを構築する

オンライン診療システムを構築する際,2つのやり方が考えられる。

【プランA】汎用サービスを用いたシステムを自作
受付 ➡ 患者登録 ➡ 重症度評価 ➡ 診療計画同意 ➡ ビデオ通信機器による診察 ➡ 処方箋発行 ➡ 次回予約 ➡ 会計
【プランB】専門業者による包括的システムを購入

本章では,オンライン診療システムを構築するとき,まずは何を準備したらよいかという疑問にお答えしていく。オンライン診療システムは,大きく凡用サービスを用いた自作システムと包括的システムにわかれるので,それぞれの利点と懸念事項を表1 8)に掲げる。

 
厚労省の指針2)では,オンライン診療システムを「オンライン診療で使用されることを念頭に作成された視覚及び聴覚を用いる情報通信機器のシステム」(本稿では,包括的システムと呼ぶ),汎用サービスを「オンライン診療に限らず広く用いられるサービスであって,視覚及び聴覚を用いる情報通信機器のシステムを使用するもの」と定義しており,どの特定の包括的システムも汎用サービスも指定ないし禁止はしていない。ただし,共通の注意事項として,「システム使用時の多要素認証」「医師の本人情報の掲載」「録画,録音,撮影における同意」「チャットやファイル送付に注意する」ことと,特に汎用サービスに関しては,「医師から患者側につなげることを徹底」「サービスごとのセキュリティポリシーの確認と患者への説明」「HPKIカードなどによる医師の個人証明」「端末内部のアドレスリストなど他のデータと連結しない設定にすること」などが明記されている。専門業者に適宜確認できる包括的システムがよいという人もいれば,安価で従前の予約や会計手順を活用できる汎用サービスから自作したほうがよいという人もいるだろう。ご自身に合ったシステムを選んで頂きたい。

4 プライマリ・ケアにおける5つのポイントを踏まえ診療する

本章では,主に「プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド Version2.0」10)を参考にプライマリ・ケアの文脈に沿ったオンライン診療実践のための5つのポイントを解説する。

(1)オンライン診療をすることが適切か

オンライン診療がふさわしいか,A~Eの5つの条件から考える(表2)10)

A 医師-患者関係

一番大切なのは,医師-患者関係の構築である。厚労省の指針2)でも,「診療に当たり,医師が患者から必要な情報の提供を求めたり,患者が医師の治療方針へ合意したりする際には,相互の信頼が必要となる」とある。初診からのオンライン診療に関しては原則かかりつけ医が行うと指針が改訂されているということからも,医師-患者の信頼関係の重要性がわかる。

また,実際にオンライン診療を行っている医師によると,もともとかかりつけであった患者に診療形態だけ変えて提供した,以前に対面診療した患者の家族に対して初診からのオンライン診療を行ってスムーズだったという声がとても多い。これまでの政府議論でも何度も出ているように,本人かどうか,手元の医療情報は確かか,というのがオンライン診療のネックになるため,身元や人となりを理解し合っている患者からスタートするのがよい。

B~Eについては,これまでの制度説明でかなり出ている部分なので,以下の追加解説にとどめる。

B オンライン診療支援者

患者が情報通信機器に慣れていない場合,接続方法やコミュニケーションを助けるオンライン診療支援者がいるか?

C 医療機関への登録

診療に必要な患者登録手続きが済み,ID が発行されているか?

D 診療区分

診療区分が初診か再診か?

E 症状

対面診察への切り替えに関わる重篤な急性症状や慢性疾患の増悪はないか?

診療区分におけるオンライン診療の「初診」の定義だけは,診療報酬上の初診・再診の定義とは異なり,同一医療機関への受診が2度目以降であっても新たな症状・疾患について受診する場合は「初診」,他の医療機関に受診し診断・処方を受けている場合であっても,当該医療機関への受診が初めての場合は「初診」と再定義されているので注意してほしい。

(2)オンライン診療の対象として適切でない状況・症状・疾患の考え方を整理する

特に初診で適切でない場合についても,表2をもとに整理しておこう。この表は日本プライマリ・ケア連合学会の「プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド Version2.0」10)から作成したものだが,日本医学会連合の「オンライン診療の初診に関する提言」3)には各科からの初診に適さない症状が挙げられているのでさらに詳しい。ここでは,「適さないとはどういうことか」を押さえると理解しやすい。

①得られる情報量の違い

診療情報提供書など信頼できる情報がない場合は,得られる情報はスクリーン越しに患者が話す内容のみであり,オンライン診療では嗅覚,触覚,聴覚を用いた診察情報が欠けることに注意する。

②手段の違い

これはここまでの繰り返しであるが,まず検査はできない(例外はD to P with Nで訪問看護師がいる場合)。また,重症者に対する点滴や手技は実施できないためリスクが伴う。「処方はできるのではないか」という意見もあるが,オンライン診療後の処方薬配達には,連携する調剤薬局にもよるところはあるが,半日から1日以上かかることが多い。対面診療のようにその場で抗菌薬や対症療法薬を服薬してもらうことは困難であり,タイムラグが生じることを知っておくとよい。

③不適切処方

2022年に一部改訂された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」2)でも,これまでと同じくオンライン初診における以下の処方は禁止されている。その他は1で述べた通りである。

麻薬および向精神薬
基礎疾患等の情報把握ができていない患者に対する薬剤管理指導料「1」の対象薬剤
基礎疾患の情報把握ができていない患者に対する8日分以上の処方

5 診察のコツ

この章では,実際の診察のコツについて,「オンライン診療診断学ことはじめ」11)での議論をもとにお話しする。

(1)患者の通信機器や通信状況を確認する

患者の通信機器や通信状況であるが,患者自身も初めはオンライン診療の接続方法に慣れていないことが多い。パソコンとスマートフォンのいずれを使用するかで,アプリケーションやそれに付随する操作が違ったり,持ち運びの可否が決まったりする。スマートフォンだと,通信が悪いときにWi-Fiの近くに移動してもらうなどの指示ができる。周囲に同意が得られていない第三者がいないか,運転中など危険な場所で接続していないか,などもこの時点で確認する。

(2)患者からオンライン診療を選択するに至った経緯を聞き取る

2の診療形態(patient care),受療の旅(patient journey)の話に通ずるのであるが,患者がどうして今回オンライン診療を望んだのかを,アイスブレイクの会話として選ぶとよい。社会背景や解釈モデルなど,患者中心の診療に必要な情報が見えてくるだろう。こちらも慣れないオンライン診療であるため,患者のニーズがわかると,何をすればよいかという診療のゴールが見え,診療の体裁が整いやすくなるであろう。

(3)普段と同じ診察をできるように患者への指示の出し方を工夫する

4で,診察から得られる情報には制限がかかるとお伝えしたが,オンライン診療でも視診に関しては,襟元を開けてもらったり,歩いたり,跳ねたりしてもらって呼吸数と呼吸様式,意識状態を確認するなど,かなりの観察が可能である。慣れると咽頭の観察もできる。この際は,「患者にどう指示すると確実な診察動作をやってもらえるか」「スマートフォンの各機能をどう活用してもらうか」といった,指導面,デバイス面の試行錯誤が必要となる。

問診の話に戻ってしまうが,ビデオ会話ではお互いの音声が被ることに抵抗があるため,順番に喋るペースが生まれる。したがって,1回の質問で正確に患者が状況を伝えられるような症状確認の質問セリフをつくっておくとよい。たとえば,「速足をすると苦しくなったり,会話をしているときに息切れを自覚したり,食事や水分をとる最中に呼吸が苦しく感じることはありませんか?」などである。オンライン診療は,実は問診のトレーニングにもなると,実践者の話し合いではよく出てくるのを耳にする。

(4)背景情報から適切な生活指導を行う

対面診療では得られない情報として,患者の背景にある生活空間というものがある。居住環境,経済状況,嗜好品の有無(たばこの吸い殻や箱,酒類),介護や育児の対象者が映り込むこともある。プライバシーに配慮した上で相手の生活に興味を持ち,カメラ越しに見せてもらうのもよいかもしれない。家庭医療学で「コンテクスト」と呼ばれるこれら患者の背景を知ってもらった上で主治医と約束した生活指導は,患者にとってもモチベーション高く取り組めるのではないだろうか。

6 発熱外来やCOVID-19陽性自宅療養者診察への応用

本章では,「プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド Version2.0」10)をもとに,発熱外来やCOVID-19陽性自宅待機患者に対するオンライン診療の応用について述べる。

(1)発熱外来への応用

ここまで述べたように,オンライン初診において風邪診療の頻度はとても高い。従前はほとんどのウイルス性上気道炎を適切に臨床診断し,流行期はインフルエンザを考え,さらに高齢者や基礎疾患のある患者では細菌性感染や他の臓器疾患などを鑑別していく風邪診療であるが,現在の発熱外来にはこれにCOVID-19の判定が加わっている。感染期には濃厚接触歴を確認し,保健所への届出に必要なワクチン接種歴なども盛り込むとよく,COVID-19に対する迅速抗原検査やPCR検査を診察後に案内するフローも必要である。

診察については風邪診療とCOVID-19診療を同時に説明するが,5で述べたような呼吸状態の確認と,咽頭痛がある患者には1日2L程度の飲水ができているかの確認が非常に重要である。咽頭の診察は,オンライン診療であれば感染防御をすることなく,カメラのライティングと解像度だけを気にして診ることもできる。

また,小児のオンライン診療ならではの診察法として,患児が自宅でリラックスして遊んでいるかなどを確認できることが挙げられる。診察の結果,たとえ軽症のウイルス性上気道炎であったとしても,対面診療と同じように診断根拠と風邪症状の改善経過,そして,一般的な臨床経過から外れたときの対面受診の条件について説明を行う。

(2)COVID-19陽性自宅療養者への応用

COVID-19陽性の自宅療養者に特異的な項目も説明しておく。まず,どんなルートで患者が紹介されるかを管轄の保健所と連携して構築する必要がある。黒木は主に,①自院で診断しそのままオンライン診療でフォローアップを行う,②他院で診断したのち,保健所の紹介でオンライン診療を行う,③他院に入院していたが早期退院となり,保健所の紹介で診療を開始する,などのパターンを紹介している10)

②の亜種だが,家族内で次々と感染し,一家全員オンライン診療をする場合もある。この際は,診療が終わったらオンライン診療の接続を切り,次の家族のアカウントに切り替えて診療を行う必要がある。

COVID-19陽性者の診察では,患者が保健所からパルスオキシメーターを貸与されている場合がある。その数値により地域ごとの患者重症度区分が変わることもある大切な所見であるため,指を温める,マニキュアは落とす,奥まで挿入するなど,しっかりと装着指導を行い,画面上で数値を確認する。低下していれば保健所に相談の上,対面診療や往診,救急搬送などを検討する。

独居の陽性者であれば,生活支援体制について聞き,危機的であれば保健所に相談するという対応や,夜間の急変に不安を感じる患者であれば,COVID-19の治る経過の見通しもしっかり説明した上で,保健所の連絡先や,できる範囲で自院の連絡番号を教える,最後は救急車を呼ぶことも考慮する,などの対応も行っていくことが重要である。

COVID-19については,家族の相談を受けることも多い。感染蔓延期では保健所の指導もままならないことがありうるため,家庭内感染防止指導や,隔離期間の情報提供なども時間が許す範囲で行うとよい。

7 今後に向けて,オンライン診療の質改善指標を考える

ここまで,オンライン診療をスタートさせようか検討中の読者を想定して解説を行ってきた。それでは,無事この新しい診療が軌道に乗ってきたら,質改善指標について考えてみてはいかがだろうか。これまでたびたび紹介してきた指針2)にも,オンライン診療の安全性や有効性についての情報は,個々の医療機関だけで保有するのではなく,今後のオンライン診療の進展に向け社会全体で共有・分析されていくことが望ましいとある。

実地医家である皆さんにおかれては,ぜひかかりつけの患者や家族にとって,オンライン診療がどんな診療体験,診療価値であったのか,どの症候や疾患を自院で完結診療でき,どのようなときに他院に紹介すべきであったのか,他の診療形態へのケア移行はスムーズであったのか,1人当たりどれほどの診療時間が適切で,何人の患者をどのように案内して診ていくことが増患や黒字につながるのかを検証してみてはどうだろうか。果ては多施設共同研究として,症状評価,治療の有効性,患者経験価値,そして費用対効果などを比較検証してみてはどうだろうか。筆者は主に日本プライマリ・ケア連合学会,日本在宅医療連合学会,日本遠隔医療学会に所属しているが,皆さんのおられる各学会で,闊達な発表と議論がなされる未来を楽しみにしている。

最後に,本稿のテーマであるオンライン診療について解説した動画も掲載する。ぜひご覧になって頂きたい(図5)。

【文献】

1)黒木春郎:オンライン診療を始める前に読む本. 中外医学社, 2021, p18.

2)厚生労働省:オンライン診療の適切な実施に関する指針. 2018(一部改訂. 2022.

   https://www.mhlw.go.jp/content/000889114.pdf

3)日本医学会連合:オンライン診療の初診に関する提言 202161日版. 2021.

   https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2021/06/20210603172150.pdf

4)厚生労働省:令和4年度診療報酬改定について 第2 改定の概要 1.個別改定項目について.

   https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000905284.pdf

5)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて(令和2410日付事務連絡).

   https://www.mhlw.go.jp/content/000620995.pdf

6)厚生労働省:オンライン診療に関するホームページ.

   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00010.html

7)中央社会保険医療協議会総会(第516回)資料. 2022.

   https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000905285.pdf

8)厚生労働省:オンライン診療研修・緊急避妊薬の処方に対する研修.

   https://telemed-training.jp/entry/entry

9)厚生労働省:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて.

   https://www.jshp.or.jp/cont/22/0304-1-7.pdf

10)日本プライマリ・ケア連合学会:プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド 「第四の診療形態」へと育てていくために. Version2.0. 2021.

     https://www.pc-covid19.jp/files/guidance/online_guidance-2.pdf.pdf

11)日本プライマリ・ケア連合学会予防医療・健康増進委員会感染対策チーム:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)プライマリ・ケアのための情報サイト オンライン診療診断学ことはじめ.

     https://www.pc-covid19.jp/telemedicine-diagnosis.htm

12)大林克巳:治療. 2021;103(2):163-9.

13)第14回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会:資料1-2 令和210月~12月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果. 2020. 

     https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000759845.pdf

14)Omboni S, et al:Connect Health. 2022;1:7-35.

15)木下翔太郎, :整・災外. 2022;65(1):41-7.

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